大量破壊兵器の保有――。
2003年のイラク戦争開戦の真相を徹底的に追い求め、その事実がないことを報道し続けた記者たちの実像。
政府発表を鵜呑みにせず、権力の監視を貫いたジャーナリスト魂に胸が打たれる。
同時多発テロ以降、愛国心と報復心が高まるアメリカ。
大手メディアはこぞってブッシュ政権のイラク侵攻を後押ししていた。
そんな中、独自取材を始めたのが中堅新聞社ナイト・リッダーのワシントン支局。
支局長を含め4人の記者が中東の専門家や外交官らに裏取りを重ねるうち、政権の嘘がわかってくる。
真っ向からの政府批判の報道とあって、孤立無援となり、脅迫も受ける。
それでも、「我々はわが子を戦場に送る者たちの味方だ」という支局長の信念は揺るがない。
監督は『スタンド・バイ・ミー』や『恋人たちの予感』など軽妙な娯楽作で知られる名匠ロブ・ライナー。
この事実を知るや、使命感を持って映画化し、自ら支局長役にチャレンジした。
本気度が伝わってくる。
実録風で冒頭からグイグイ引き込まされる。
非常にシャープな演出だ。
ともすれば記者を美化しがちだが、どこまでも等身大の視点で見据えていた。
その記者に扮したウディ・ハレルソン、ジェームズ・マースデン、トミー・リー・ジョーンズは実際に取材に当たった記者からアドバイスを受け、演技に臨んだ。
情報入手の場面はリアル感満点だった。
戦場で負傷した若い兵士の悲痛な姿が並行して描かれ、ニュース映像も随所に挿入される。
これらがより現実味を高めていた。
この話は全く知らなかった。
元新聞記者の身としていたく感動を覚えた。
ジャーナリズムの本質に迫った『大統領の陰謀』、『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』と比肩できる一級の社会派映画である。
1時間31分
★★★★★(今年有数の傑作)
☆3月29日(金)から全国公開
関西では、大阪ステーションシティシネマ、布施ラインシネマ、シネ・リーブル神戸
3月30日(土)から 京都シネマ
【配給】ツイン
(日本経済新聞夕刊に2019年3月29日に掲載。許可のない転載は禁じます)