武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

人生バンザイ、ウイスキーバンザイ!!~『天使の分け前』

投稿日:2013年4月12日 更新日:

明日から素晴らしい映画が公開されます!!

 

ウイスキー好きの人、そうでない人も、この映画は何か生きるヒントを与えてくれますよ(^o^)v

 

熱い原稿を書きました。

 

     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆

© Sixteen Films, Why Not Productions, Wild Bunch, Les Films du Fleuve,

何とも魅惑的な題名である。

 

洋酒党なら、心がときめくだろう。

 

「天使の分け前」とは、ウイスキーが熟成樽の中で年に2%ほど蒸発して失われること。

 

文字通り、英スコットランドを舞台に、スコッチを準主役的に使った人生讃歌だ。

 

冒頭、無軌道に生きる失業中の若者たちが映し出される。

 

その中の1人ロビー(ポール・ブラニガン)は妊娠中の恋人と家庭を持ちたいと願うも、彼女の父親に嫌われ、すさんだ環境からも抜け出せないでいる。

 

社会派映画の名手ケン・ローチ監督の世相を見据える眼差しは鋭い。

 

単なる娯楽作には決して仕上げない。

 

本作はそれでいてコミカル風味に変化球で斬る。

 

その決め球がウイスキーだ。

 

それも原酒のシングルモルト。

© Sixteen Films, Why Not Productions, Wild Bunch, Les Films du Fleuve,

初めて口にしたロビーが「ひどい味」と顔をしかめるが、その後、水を加えて神妙な面持ちで吟味していた。

 

まさに人生が変わらんとする瞬間だった。

 

ここから物語は面白いように転がっていく。

 

主人公がウイスキーの虜になるにつれ、溌剌としてくる。

 

独学で味覚を鍛え、歴史や製造方法、銘柄などを学ぶ。

 

「好きの力」は絶大。

 

生きる原動力にすらなる。

 

「生命の水」という意味を持つウイスキーが後押しするのだから、怖いものなしだ。

 

目に輝きを増すロビーの爽やかな姿に胸が打たれる。

 

彼をウイスキーの世界へ導いた社会奉仕活動の指導員ハリー(ジョン・ヘンショー)の好人物ぶりが印象的だ。

© Sixteen Films, Why Not Productions, Wild Bunch, Les Films du Fleuve,

ローチ作品では考えられない善人だが、それがかえって映画を引き締めた。

 

終盤、あっと驚く展開が用意されている。

 

そして題名がラストで大きな感動を呼び起こす。

 

痛快、痛快。

 

実際に蒸留所で撮影し、実在の名酒が次々と登場する。

 

ウイスキー通にはこたえられないが、上質な人間ドラマなので、誰もが“ほろ酔い気分”になれるはず。

 

1時間41分。

 

★★★★(見逃せない)

 

☆13日からシネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸ほかで公開

 

(日本経済新聞2013年4月12日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。