明日から素晴らしい映画が公開されます!!
ウイスキー好きの人、そうでない人も、この映画は何か生きるヒントを与えてくれますよ(^o^)v
熱い原稿を書きました。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
何とも魅惑的な題名である。
洋酒党なら、心がときめくだろう。
「天使の分け前」とは、ウイスキーが熟成樽の中で年に2%ほど蒸発して失われること。
文字通り、英スコットランドを舞台に、スコッチを準主役的に使った人生讃歌だ。
冒頭、無軌道に生きる失業中の若者たちが映し出される。
その中の1人ロビー(ポール・ブラニガン)は妊娠中の恋人と家庭を持ちたいと願うも、彼女の父親に嫌われ、すさんだ環境からも抜け出せないでいる。
社会派映画の名手ケン・ローチ監督の世相を見据える眼差しは鋭い。
単なる娯楽作には決して仕上げない。
本作はそれでいてコミカル風味に変化球で斬る。
その決め球がウイスキーだ。
それも原酒のシングルモルト。
初めて口にしたロビーが「ひどい味」と顔をしかめるが、その後、水を加えて神妙な面持ちで吟味していた。
まさに人生が変わらんとする瞬間だった。
ここから物語は面白いように転がっていく。
主人公がウイスキーの虜になるにつれ、溌剌としてくる。
独学で味覚を鍛え、歴史や製造方法、銘柄などを学ぶ。
「好きの力」は絶大。
生きる原動力にすらなる。
「生命の水」という意味を持つウイスキーが後押しするのだから、怖いものなしだ。
目に輝きを増すロビーの爽やかな姿に胸が打たれる。
彼をウイスキーの世界へ導いた社会奉仕活動の指導員ハリー(ジョン・ヘンショー)の好人物ぶりが印象的だ。
ローチ作品では考えられない善人だが、それがかえって映画を引き締めた。
終盤、あっと驚く展開が用意されている。
そして題名がラストで大きな感動を呼び起こす。
痛快、痛快。
実際に蒸留所で撮影し、実在の名酒が次々と登場する。
ウイスキー通にはこたえられないが、上質な人間ドラマなので、誰もが“ほろ酔い気分”になれるはず。
1時間41分。
★★★★(見逃せない)
☆13日からシネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸ほかで公開
(日本経済新聞2013年4月12日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)