この映画を天国からどんな風に観てはるんやろうな~(^o^)v
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16年前、36歳で急逝した英国のダイアナ元皇太子妃。
彼女のドラマチックな人生の映画化は予期されていた。
ただ、王室から離れていたとはいえ、やんごとなき人。
いかに切り込むのか、そこが気になった。
本作は秘められた恋愛に焦点を当てた。
安易に描写すると、醜聞的になる。
それをドイツ人のオリヴァー・ヒルシュビーゲル監督が外国人として適度な距離感を保ったまま、芯のある女性ドラマに仕上げた。
夫チャールズ皇太子との別居3年後(1995年)、ダイアナは2人の息子とたまにしか会えず、寂しさと孤独感を募らせていた。
そんな時、パキスタン人の心臓外科医ハスカット・カーンと出会い、恋に落ちる。
ナオミ・ワッツがヒロインになり切って大熱演。
見様によってはそっくりだった。
恋人役のナヴィーン・アンドリュースの風格ある演技も申し分ない。
変装して逢瀬を重ねるダイアナの一途さと無邪気さ。
まるで初恋に酔いしれる少女のようで、ことさら純真さを際立たせる。
その反面、メディアを巧みに利用し、世論を味方につけようと画策する。
なかなか狡猾だ。
懇意にしている記者に電話でリークする時の表情がいかにも小悪魔的で印象深い。
彼女が尽力した地雷廃絶運動や慈善事業といった公的な部分だけでなく、裏の面や私生活まで余すことなく映し出す。
暴露しすぎた感があるも、それが核心部として重みを増す。
「世界のプリンセス」から本来の自分への回帰。
単なる恋物語に終わらせなかったところに監督の見識を感じた。
2人の関係を濃厚に、かつ品よく描いた手腕も評価したい。
「クイーン」(2006年)、「英国王のスピーチ」(10年)など英王室を題材にした映画が存外に多い。
本作はその〈番外編〉として記憶に留まるだろう。
1時間53分
★★★★(見逃せない)
全国で公開中
(日本経済新聞2013年10月18日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)