第2次大戦中、英国スコットランドの西部海域に浮かぶアウター・ヘブリディーズ諸島の小島で、貨物船が座礁した。
積み荷は5万ケース(約26万本)のスコッチ・ウイスキー。船が沈没する。
さぁ、島民はどうしたのか!?
実際に起きた海難事故から8年後の1949年に映画化された。
それをスコットランド人のギリーズ・マッキノン監督がコミカル風味にアレンジし、リメイクしたのが本作である。
戦時下の統制でウイスキーの配給が停止され、呑み助の島民が動揺する。
この異常事態を「ノアの大洪水以来の惨事だ」と言わせる辺り、遊び心が充満していて笑わせる。
キーパーソンは郵便局長の2人の娘。
共にフィアンセがいる。
しかし婚約パーティーではウイスキーの祝杯が不可欠。
あゝ、このままでは結婚できない。
このようにウイスキーへの渇望がピークに達した時に貨物船の事故が起きる。
これぞ神の恵み。
そう受け止めた島民の一致団結ぶりがすこぶる面白い。
彼らの行動に目を光らせるのがワゲット大尉。
島での嫌われ者だが、そのことに全く気づいていない能天気さが何とも可愛く、まるで道化師のように見える。
この手の映画にはこんな三枚目が必要だ。
両者の攻防が物語の軸となる。
そこに英王室の極秘文書を絡ませた。
素材としては申し分ないのに、淡白に描きすぎた。
惜しい。
舞台となったエリスケイ島を訪れたことがある。
島で唯一のパブに当時のボトルが保存されていた。
店主にいくら懇願しても、飲ませてくれなかったが……。
全編を通して品性のある佇まいは英国喜劇の伝統といえよう。
観終わってから、無性にスコッチが欲しくなる、そんな映画だった。
ちなみに銀幕に次々と映し出されるウイスキーは全てフェイク(ニセモノ)!
1時間38分
★★★(見応えあり)
☆17日から大阪・テアトル梅田、シネ・リーブル神戸ほか全国で公開。以降、京都シネマ……。
(日本経済新聞夕刊に2018年2月16日に掲載。許可のない転載は禁じます)
初日の明日、テアトル梅田でトークショーをやります。
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