武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

北アイルランド紛争を背景にしたスパイ・サスペンス~『シャドー・ダンサー』

投稿日:2013年3月30日 更新日:

阪神が開幕戦に快勝し、気分がええです(^o^)v

 

今日はお花見日和。

 

春ですね~♪♪

 

今日から、ちょっと渋めの秀作『シャドー・ダンサー』が公開されます。

 

     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆

(C) Shadow Dancer Rights Limited / BBC / The British Film Institute / Wild Bunch 2012

「キャル」(1984年)、「クライング・ゲーム」(92年)、「父の祈りを」(93年)……。

 

北アイルランド紛争やIRA(アイルランド共和軍)を描いた映画の中で、本格的なスパイ・サスペンスはこれが初めて。

 

プロテスタント系市民が多数派を占める英国領北アイルランドで、少数派のカトリック系市民による公民権運動を機に、70年代前半に泥沼の紛争が勃発。

 

反英武装闘争を貫くIRAとロイヤリスト武装組織、英軍、警察との衝突がいくたの負の遺産を残した。

 

本作の内容もそうだ。

 

和平合意の5年前、IRAの爆弾テロが続発していた1993年の物語。

 

ベルファストで暮らすシングルマザーのコレット(アンドレア・ライズブロー)はその実行犯だった。

 

彼女が幼少時、自身の行動が引き金となり、紛争の巻き添えで弟を亡くした。

 

その罪悪感から組織への忠誠心を強めていた。

 

兄弟も周囲もみなIRAの一員だ。

 

そんなコレットに、英国情報局保安部(MI5)の捜査官マック(クライヴ・オーウェン)が接近し、究極の選択を迫る。

 

ホテルの一室で、2人が対峙する場面は現実味を伴い、言い知れぬ緊迫感を生み出していた。

 

マックの言動は紳士的だが、実は脅し同然で、巧みに彼女を操り、追い込んでいく。

 

その恐ろしくも非情な世界をジェームズ・マシュー監督は主人公に寄り添いながら、寒々しい映像の中であぶり出す。

 

スパイ映画には密告や裏切りが付き物だ。

 

最愛の息子を守らんがために当局と組織、家族との狭間で揺れ動くコレット。

 

人前では凛とした表情を崩さないだけに、彼女の心模様があまりにも哀しい。

 

ラスト、題名の意味が驚きを持って判明する。

 

フィクションだが、さもありなんと思わせ、そこに紛争の根深さを改めて感じさせる。

 

真のテーマは家族愛だった。

 

1時間41分

 

★★★(見ごたえあり)

 

☆30日からシネ・リーブル梅田で公開

 

(日本経済新聞2013年3月29日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)

 

 

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。