武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

アカデミー最有力候補作『英国王のスピーチ』~コンプレックスの克服

投稿日:2011年2月22日 更新日:

英国王
© 2010 See-Saw Films. All rights reserved.
今年のアカデミー賞の発表が来週の月曜日(28日=日本時間)に迫ってきました。
作品、監督、主演男優賞など12部門でノミネートされているのが、このイギリス映画です。
はっきり言って、非常に見応えのある人間ドラマです。
観させます!!
超オススメ!!
フリーペーパーの映画情報リーフレット『シネルフレ(CINE REFLET)』に、本作について書いたぼくのエッセーをどうぞ。
     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆
人間、誰だって何らかのコンプレックスを持っている。
ぼくなんぞ、1つ、2つ、3つ……、わ~っ、8つほどある! 
かといって別段、困ったことはないが、日常業務に差し障りがあるとなると大変だ。
この映画の主人公、英国王ジョージ6世(コリン・ファース)のように〈国家の顔〉ともなれば、なおさら。
かの国王は重い吃音に悩まされていた。
現在のエリザベス女王の父君である。
日本では陰が薄いが、第2次大戦中、首相のチャーチルと共に国民を鼓舞し続けた御仁として英国では今なお人気を誇っている。
公の場やラジオ放送では、王室ならではの威厳と気品ある演説が要求される。
大英帝国の威信もかかっている。
結婚披露宴のスピーチどころではない。
なのにジョージ6世は、聴くのが辛いほど思うように喋られない。
あゝ、致命的。
冒頭のシーンからぼくはハラハラさせられっぱなしで、知らぬ間に口をもぐもぐさせていた。
そんな国王にオーストラリア人の言語聴覚士ライオネル(ジェフリー・ラッシュ)が身分を無視して、対等な関係で施療に当たる。
よほど信念があるのだろう。
その過程で、左利きとX脚を矯正させられた幼少期の苦い体験や家庭環境がトラウマになっていることがわかってくる。
2人は本音をぶつけ合い、次第に友情が芽生えていく。
そこが物語の軸となるが、兄王の「王冠を賭けた恋」のせいでやむなく(嫌々?)王位に就き、戦争に突入するという時代の流れが加味される。
非常に重層的である。
映画はこうでなきゃアカン。
クライマックスとなる世紀のスピーチは、荘重なベートーベンの交響曲第7番第2楽章をバックに流していた。
どうして今から戦うドイツの音楽を使ったのか。
英国のエルガーの楽曲にすればいいものを。
敵を呑み込む? 
いや違う。
耳に障害を持ちながらも偉業を残したベートーベンの姿に重ね合わせたのだ。
ぼくはそう思っている。
深読みかな~。
☆2010年 1時間58分
☆監督 トム・フーパー
☆26日、全国でロードショー

-映画

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

『大阪「映画」事始め』、各メディアで続々、紹介されています~!

『大阪「映画」事始め』、各メディアで続々、紹介されています~!

またまた拙著『大阪「映画」事始め』(彩流社)に絡む投稿で申し訳ありません~(^^;)   ほんま、しつこいですねぇ~(笑)   今日の朝日新聞夕刊に本の紹介、大阪映画サークルの機関 …

新聞記者の意地と底力、『消されたヘッドライン』~

新聞記者の意地と底力、『消されたヘッドライン』~

日本経済新聞(大阪本社)の金曜夕刊「文化欄」に、だいたい2週間に1度のペースで映画の原稿を書いています。「シネマ万華鏡」というコーナーです。一応、映画評になっていますが、ぼく自身としては映画エッセーの …

映画ネタを散りばめ、人生の再出発を綴る~『Re:LIFE~リライフ~』

映画ネタを散りばめ、人生の再出発を綴る~『Re:LIFE~リライフ~』

自分の居場所を失った時、はてどうすべきか?   ドラマでは新天地に赴き、再出発するケースが多い。   本作はその典型例。題材が映画のシナリオとあって俄然、興味を引きつけられる。 & …

末期医療の実情に迫る~『終(つい)の信託』

末期医療の実情に迫る~『終(つい)の信託』

重いけれど、観させる。   そして考えさせられる。   こういう映画もたまには観る方がいいと思います。   今日から封切りです。        ☆     ☆  …

苦~いボンド・マティーニ

苦~いボンド・マティーニ

007シリーズの最新作『007/慰めの報酬』が24日から封切られます。22作目です。ダニエル・クレイグが6代目ジェームズ・ボンドとして、前作『007/カジノ・ロワイヤル』(2006年)以上に大熱演。最 …

プロフィール

プロフィール
武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。