武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画の地を訪ねて(4)フィンランド・ヘルシンキ~『かもめ食堂』

投稿日:2011年9月18日 更新日:

透明感のある淡彩な街……。
エストニアの首都タリンから乗船した高速フェリーが、フィンランドの首都ヘルシンキに近づいたとき、船上からぼくが目にした街の印象は非常に爽やかなものだった。
北欧の夏の陽光がとても柔らかい。
ヘルシンキ(1)
(フィンランド~スウェーデン間を結ぶフェリー)
ヘルシンキ(3)
(ヘルシンキのシンボル、白亜の大聖堂)
ヘルシンキ(2)
(ヘルシンキの街並み。市電が市民の足として活用されている)
ヘルシンキ
(街頭のクィックマッサージ……お疲れの人が多いようです)
ヘルシンキ(5)
(港の岸壁にある古風な食品市場)
ヘルシンキ(4)
(食品市場の中の店舗)
沖に浮かぶ要塞化されたスオメンリンナ島(世界遺産)を正面に見据え、港から海岸通りを南へ向かった先がカイヴォプイスト公園。
さらに歩を進め、右手のアパート群を北側に越えた通りに目的地があった。
ヘルシンキ(6)
2006年公開の日本映画『かもめ食堂』(荻上直子監督)の舞台である。
ここで日本食の店を始めたサチエ(小林聡美)がひょんなことからミドリ(片桐はいり)、マサコ(もたいまさこ)と知り合い、女性3人で食堂を切り盛りする。
といっても、日本かぶれのフィンランド人青年が毎日、顔を覗かせるだけで、客が来ない。
なのに、「どうにかなるでしょう」とみないたってのん気だ。
あくせくしない。こんなゆったりとした調子で物語が進む。
理屈抜きに和まされる。
疲れたときに観れば、効果てきめん。
ヘルシンキに来て、3人の恬淡とした生き方がこの街の雰囲気とマッチしているのが実感できた。
そこは『カハヴィラ・スオミ』(「カフェ・フィンランド」の意味)というフィンランド料理店だった。
通りに面した窓ガラスに日本語で「かもめ食堂」と書かれ、映画のポスターも貼ってある。
ヘルシンキ(9)
さっそく入った。
厨房が左奥に変わり、少し暗くなっていたが、十分、映画の世界を彷彿させる。
ヘルシンキ(7)
客の半分以上が日本人だった。
若い女性が目立つ。
横浜から来たOLは「シナモンロールを食べたくて、また来ました」。
映画で話題になった一品だ。
日本語のメニューもあり、すっかり観光スポット化している。
ちと嫌気がさしたが、どうしても口にしたいものがあった。
トナカイの肉である。
それをおにぎりの具にして試食したサチエはまずそうな顔をしていた。
しかしステーキはクセがなく、かなり美味だった。
ヘルシンキ(8)
翌朝、街の北方にあるオリンピック競技場のタワー(高さ72㍍)に上った。
ヘルシンキ(11)
眼下に広がる緑深い森と入り込んだ湾。自然の中に市街地があるといった感じ。
ヘルシンキ(12)
心安らぐ光景に見惚れていると、フィンランド人の中年男性から流暢な日本語で話しかけられた。
商社マンらしい。
「『かもめ食堂』のほのぼのとしたムードに癒されました。都会暮らしはしんどいですね」
えーっ! 
どこも同じなんだ。
驚いた途端、1羽のカモメが目の前を横切った。
(読売新聞2010年2月9日朝刊『わいず倶楽部』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。