武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

スコットランド一人旅(2024.5.26~6.6) 日記

スコットランド一人旅(9)

投稿日:2024年6月9日 更新日:

旅の9日目(6月3日)--。

監禁状態のインヴァネスの宿屋。

何だか刑務所に入っているような感じでしたが、その割には熟睡できました〜(笑)

朝、目覚めてもまだ怒りが収まらず、思いっきりドアを叩いたら、カチャと音がし、開きました。

えっ……、ウソやろ。

やった!!

無事に解放されました。

それにしても、一体何やってん?

ともあれ、帰国後、この事案を予約サイトにきっちり報告しときます。

  ☆     ☆     ☆     ☆     ☆

午前中にインバネスから逃れるようにして、バスでピトロホリー(Pitlochry)に向かいました。

その途中、スマホをUSBコードで充電していたら、突然、電源ランプが白く光り、液晶画面が真っ黒になってしまいました。

いくら電源スイッチを押しても、うんともすんとも言わない。

えっ、「感電死」!!

ブラックアウトや!

それまでは列車や宿屋で同じようにUSBコードでちゃんと充電できていたのに……、摩訶不思議です。

ホンマに、えらいこっちゃ!

と思ったけれど、どうしようもありません。

もう開き直るのみ。

かつては、ネットやスマホに頼らず旅をしていましたからね。

ただ、データが失われたのかどうかが気がかり。

帰国後、すぐにドコモショップへ駆けつけます。

幸い、このハプニングが旅の終盤でよかったです。

それと、旧式のデジカメを予備に持ってきていて、ホンマに助かりました!

それにしても、スマホを手にしなくなったことで、妙に解放感を得られ、気持ちが軽やかになりました。

そして大きな発見がありました。

今はスマホを駆使して何でもかんでも自分でチェックし、解決しようとしていますが、わからないことは人に訊けばええんですよ。

いかに人とのコミュニケーションが希薄になっているか!

このあと、わずか4日間でしたが、デジタル社会の中でアナログ的に暮らすことができ、すごく楽しかったです(笑)。

  ☆     ☆     ☆     ☆     ☆」

スマホの「感電死」で、ちょっと動揺しながら、ピトロホリーに到着しました。

36年ぶりです。

ヴィクトリア女王が避暑で訪れて以来、リゾート地として発展した町で、かの夏目漱石もここで逗留してはりました。

湖やダムがあり、のんびりするにはうってつけです。

前日のインヴァネスの宿とはうって変わり、ここではちょっと贅沢し、瀟洒なプチホテルを予約しておきました。

そのホテルに荷物を預かってもらい、東方にあるエドゥラダワー(Edradour)蒸留所をめざしました。

エドゥラダワーはぼくが初めて訪れたスコットランドのウイスキー蒸留所で、インパクトがすごく大きかったので、ぜひとも再訪したかったのです。

それが旅の4つ目(最後)の目的。

前回はレンタサイクルで嫁さんとえっちらおっちら丘を上って蒸留所へ行き、そのくだりをぼくの処女出版『スコットランド気まま旅~モルト・ウイスキーの故郷へ』(私家版)の冒頭で記しています。

今回も自転車で行こうと思ったのですが、珍しく雲一つないスコットランド晴れだったので、ピクニックがてら徒歩で向かうことにしました。

ところが道に迷い、かなり離れたところへ来たようで、あわてて目的地を調べるためにスマホを取り出すも、使えない。

そこで、民家のドアのベルを押したら、大柄のおじさんが出てきました。

「日本の観光客です。エドゥラダワー蒸留所へ行く途中、道に迷いました。どう行くんですか?」

「あんた、方向が間違ってますよ。ここからかなり遠い。前の道を左へ行って、ほんで坂を下って……」

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください。地図で書いてください」

紙とペンを差し出すと、このおじさん、ニコッと笑みを浮かべ、

「よっしゃ、車で送ってあげますわ」

「やったー!!」

日本に行ったことがないのに、寿司と天ぷらが大好物というこの人も天使でした!

念願叶って蒸留所へたどり着けました。

しかし門が閉ざされていて、「CLOSED」の表示が……。

蒸留所自体は稼働しているんですが、あまりに多い見学者にスタッフが対応できず、その後、従業員不足が続き、見学ツアーを中止したそうです。

この情報は、先ほどのおじさんから教えてもらいましたが、ぼくも承知していました。

何せスコットランド最小の蒸留所なのに、見学者の数が半端ではなかったそうだから。

敷地に入れなかったのは残念でしたが、白い壁に赤色が施された可愛い建物、敷地内を流れる小川のせせらぎ……、何もかも変わっていなかったのが嬉しかったです。

あの時、まだ弱冠、33歳でした。

あゝ、感慨深い……。

ちょうど中年夫婦が来たので、写真を撮ってもらいました。

ウェールズ人の観光客。

デジカメを渡すと、キョトンとしてはりました。

今やスマホで写真を撮るのが当たり前になっているので、仕方がないですね(笑)

事情を言うと、「わっ、悲劇……、以前、このカメラと同じモンを持ってましたわ」。

スコットランド人の英語と発音+イントネーションがかなりちゃいますね。

正門の前で、町で買ってきたサンドイッチでランチを取っていると、蒸留所の中から樽を運ぶトラクターが近づいてきました。

運転手の男性と目が合ったので、「ハロー」。

すると運転手がトラクターを停め、何やら話しかけてきました。

早口でよくわからなかったのですが、どうやら、「見学できず、すんませんね」と言っているみたい。

ぼくが運転席に近き、「日本から来ました。36年ぶりの再訪なんです」と言うと、運転手は驚いた表情。

そして、笑みを浮かべて、日本語でひと言。

「ありがとう」

びっくりした〜!

これで旅の目的をすべてクリアでき、言い知れぬほどの満足感を抱き、蒸留所を後にしました。

  ☆     ☆     ☆     ☆     ☆

エドゥラダワー蒸留所からの帰り、林の中の小径を下っていきました。

蒸留所内を流れていた穏やかな小川が渓流となり、途中、瀑布に変身するというダイナミックな光景に目を奪われました。

マイナス・イオンが体に取り込まれていくのを実感。

そのうち林を抜け、ブレア・アソール(Blair Athol)蒸留所に来ていました。

エドゥラダワー蒸留所へ行く前、2時の見学ツアーに予約していたんです。

ここで初めて日本人と会いました。

15人ほどの団体さんでした。

ちょうど前の見学ツアーを終えたところみたい。

見たところ、70歳以上の人ばかりで、半数ほどがマスクをしてはります。

こちらではマスク姿を見ていなかったので、めちゃめちゃ異様に思えました(笑)

「こんにちは!」と挨拶しても、皆さん、無視。

ぼくがよほど怪しい日本人に見えたのか……、これ、しばしば経験しているので、ノー・プロブレムです。

ツアー客は、アメリカ人、デンマーク人、ポーランド人、南米コロンビア人(珍しい!)、先ほどエドゥラダワー蒸留所で会ったウェールズ人、そして日本人(ぼく)。

国際色豊かでした。

ビートルズ帽を被っていたぼくに、ガイドの女性が「ビートルズ・ボーイ」とニックネームを付けてくれました。

もうじき70歳になろうというのに、「ボーイ」と呼ばれ、1人悦に入ってました、ウフフ(笑)

どの蒸留所でもガイドの説明はほとんど同じなので、ぼくはツアー客のヒューマン・ウォッチングをしたり、建物や装置を眺めたりしていました。

ここの外観もすごく美しく、絵になります!

顔がそっくりなコロンビア人の母娘と片言英語でしばし会話。

「何でスコットランドへ?」

母親「酒場を経営してますねん。ウイスキーが好きやさかい、スコットランドの全蒸留所を巡る予定ですねん」

「えっ、150カ所ほどあるんですよ!?」

娘「お母ちゃん、10日間では絶対に無理やて」

ぼくもそう思いましたわ(笑)

最後に娘さんから訊かれました。

「ジャパニーズ・ウイスキーの蒸留所は何カ所くらいあるんですか?」

「確か……、80カ所を超えているかも」

母親「来年、日本へ行きますわ!」

ホンマかいな(笑)

この蒸留所は、イギリスの大手酒造会社ディアジオ(Diageo)が所有しているので、ギフトショップには、ブレア・アソールのみならず、ジョニー・ウォーカー(Johnnie Walker)、ホワイト・ホース(White Horse)、タリスカー(Talisker)、カリーラ(Caol Ila)などいろんなボトルが並べられていました。

エドゥラダワー蒸留所が見学ツアーを中止しているので、こちらに観光客が流れ、かなり混み合っていました。

帰ろうとすると、中国人の団体さんがどっと入って来て、空気がガラリと一変。

何せびっくりするほどの大声で喋り出し、のべつ幕なしに写真を撮りまくるのだから、数人のスタッフがあわてて「静かにしてください!」と注意する始末。

うーん、これはマナーとしてノー・グッドですね。

それにしても、数年前、多くの蒸留所や観光スポットでは、日本語の案内板や説明書があったのですが、今ではほとんど中国語に置き換わっています。

これも時代の流れですかね……。

でも、ちょっぴり寂しくなりました。

-スコットランド一人旅(2024.5.26~6.6), , 日記

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。