きょう、叔母の告別式がありました。
享年86。
ほんとうに久しぶりに親戚と顔を合わせました。
いとこたちと会った瞬間、40数年前の幼少時代にタイムスリップし、今やおっちゃん、おばちゃんになっているのに、「○○坊」「△△ちゃん」と呼び合っていました。
ぼくは「ヨシノブちゃん」です(そのままや!!)。
お骨上げまでの間、みんなで食事を取りました。
話が弾みますね。
一緒に食卓を囲むって、やっぱりええもんやな~と改めて実感しました。
あすから公開される中国映画『再会の食卓』は、タイトル通り、食事のシーンがキーポイントです。
きょうの日本経済新聞夕刊文化面に、この映画についてのエッセーを書きました。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
東西ドイツ、南北朝鮮……。
国家分断は計り知れない悲劇を生む。
中国の国共内戦(1946~49年)によって離れ離れになった元夫婦の再会の物語だが、お涙頂戴ものに終わらせず、「食」を斬り口にして家族のあり方を問いかける。
内戦で混乱の極みにあった上海で、国民党兵士の夫イェンション(リン・フォン)は妻ユィアー(リサ・ルー)を残したまま台湾へ逃れた。
引き裂かれた新婚の2人。
あれから40余年、中台交流事業で夫が上海に彼女を訪ねてきた。
しかし「招かれざる客」だった。
ユィアーは新しい夫シャンミン(シュー・ツァイゲン)と子供、孫たちと幸せに暮らしていたからだ。
それを承知で、元夫は元妻を台湾へ連れて帰ろうとする。
彼女も同意している。
愛の深さは認めるけれど、これは略奪ではないか。
きっと壮絶な三角関係に発展すると思いきや、意外や意外、いたって穏やかにドラマが展開する。
何と豪勢な上海料理で一家は客人をもてなすのである。
今の夫は面子丸つぶれ。普通なら激怒するはず。なのに温顔を絶やさず、礼節を尽くそうとする。
あまりの人の善さと寛容さにあ然とさせられる。
当事者の3人が3様、感情を直接ぶつけず、それぞれの気持ちを尊重し合う。
大人とはかくあらねばと教えられた。
非常にシリアスな内容だが、事あるごとに映し出される食卓のシーンが刺々しさを和らげる。
カメラは据え置き。
ゆっくりと被写体に近づき、ゆっくりと遠ざかる。
その静謐な映像に、時間を共有して食卓を囲むことの意味をワン・チュエンアン監督が重ね合わせていく。
食事の場面は彩りも鮮やかで、どれも見させる。
立場は違えども、厳しい時代を乗り越えてきた同志的な絆も感じさせる。
それが後味の良さにつながった。
1時間36分
★★★
☆26日~大阪・梅田ガーデンシネマで公開
(日本経済新聞2011年2月25日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)
食卓を一緒に囲むということ~中国映画『再会の食卓』
投稿日:2011年2月25日 更新日:
執筆者:admin