武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

日記

芥川龍之介の『侏儒の言葉』

投稿日:2010年9月19日 更新日:

阪神タイガースが大事な巨人戦に敗れ、悄然……。
気分を変えようと何気なく手に取ったのが1冊の文庫本。
芥川龍之介の『羅生門・鼻・侏儒の言葉』です。
芥川
35年前の大学生のころ、古本屋で買ったもの。
紙がボロボロになっていました。
その中の箴言集『侏儒の言葉』を久しぶりに読みました。
「侏儒(しゅじゅ)」とは、「小さい人」「見識のない人」のことで、筆者(芥川)が自分のことをへりくだって言ったものです。
これを芥川が書き始めたのは大正12年、32歳のときでした。
いろんな用語や想念を自分なりに断定的に定義づけていて、面白いですね。
芥川はかなり皮肉屋であり、高まりつつある軍国主義に対して痛烈に批判しているのがよくわかります。
へ~っ、そうかなと首を傾げたり、そやそやと頷いたり、ユニークな発想やな~と感心したり。
印象に残った言葉を以下に記します。
☆道徳は常に古着である。
☆良心とは厳粛なる趣味である。
☆良心は道徳を造るかもしれない。しかし道徳はいまだかつて、良心の良の字も造ったことはない。
☆正義は武器に似たものである。武器は金を出しさえすれば、敵にも味方にも買われるであろう。
☆天才とはわずかに我々と一歩を隔てたもののことである。ただこの一歩を理解するためには百里の半ばを九十九里とする超数学を知らねばならぬ。
☆天才の悲劇は「こじんまりした、居心のいい名声」を与えられることである。
☆忍従はロマンティックな卑屈である。
☆恋愛の徴候の一つは彼女に似た顔を発見することに極度に鋭敏になることである。
☆文章の中にある言葉は辞書の中にある時よりも美しさを加えていなければならない。
☆最も困難な芸術は自由に人生を送ることである。もっとも、「自由に」という意味は必ずしも厚顔にという意味ではない。
☆我々はいったい何のために幼い子供を愛するのか? その理由の一半は少なくとも幼い子供にだけは欺かれる心配のないためである。
この辺りで止めておきます。
最後にこのフレーズを。阪神ファンのぼくには痛いほど胸に響きました。
☆人間的な、あまりにも人間的なものはたいていは確かに動物的である。

-日記

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。