武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

『借りぐらしのアリエッティ』~つれづれなるままに

投稿日:2010年8月14日 更新日:

アリエッティ(3)メイン
©2010 GNDHDDTW
スタジオジブリの最新作は、とても“観心地”の良いアニメでした。
宮崎駿さんが企画と脚本、米林宏昌さん(37)が初監督として演出しました。
7月はじめに試写で観て、スコットランドから帰ってきてから映画館でもう一度、鑑賞しました。
背丈が10センチほどの小人と人間との交流を描いた物語です。
小人は人家の軒下にちゃんと居を構え、日常生活を送っています。
アリエッティ(5)床下
©2010 GNDHDDTW
身体がコンパクトで、ひと昔前の暮らしぶりを続けている以外、わたしたち人間とまったく変わりません。
でも、彼らは人間を極度に恐れ、ひとたび見られると、潔く引っ越していきます。
常に逃避を念頭に置いているところが無性に哀しいです。
おそらく人間によって種族が減ってきたのでしょう。
主人公の少女アリエッティは、この世には両親のほかにもう仲間がいないのではないかと思っています。
アリエッティ(1)一家
©2010 GNDHDDTW
そんなアリエッティを心臓病で苦しむ少年、翔が目撃します。
それも冒頭でいきなり。
アリエッティ(6)止翔出会い
©2010 GNDHDDTW
触れ合ってはいけない間柄なのに、2人は知らぬ間に接近していきます。
それほど大きなドラマはありません。
舞台も、広々とした庭がある郊外の洋館建ての家屋が中心です。
しかし描かれたテーマは計り知れないほど大きなものでした。
いろんな意味で自分と異なる者に対してどう関わっていけばいいのか、そのことを『借りぐらしのアリエッティ』は押し付けがましくなく伝えていたように思います。
自分と異なる者と接触すると、人間というものはとかく比較し、違和感を覚え、排除しようとします。
そのうち敵意が芽生えてきたりして……。
でも偏見を捨て、相手との違いを認め、それを理解していけば、何かプラスに働くことがあるはずです。
翔とアリエッティはまさにそうでした。
アリエッティ(2)横顔
      ©2010 GNDHDDTW
彼女は当初、少年(人間の存在)に対して疑心暗鬼でしたが、彼のピュアな気持ちが伝わってくるにつれ、すべての人間を一緒くたにできないことがわかってきます。
そしてお互いにそれぞれの生き方を尊重するのです。
換言すれば、思いやり。
相手(他者)のことを考える……。
昨今、人権という堅苦しい言葉がよく使われるようになりましたが、結局、それは思いやりのことだと思います。
その気持ちを抱くことの大切さが、この映画に深く根づいています。
自分のことしか考えない人間が増えてきている現状を鑑みると、よりいっそうこの作品がいとおしくなります。
全体的に儚げな空気が作品を包み込んでいました。
滅びゆく種族と病気の少年……。ダイナミックさとは対極の世界です。
でもその儚げな空間が得もいわれぬ心地よさをかもし出していました。
フランス・ブルターニュ出身の女性ミュージシャン、セシル・コルベルのケルト音楽の効果も絶妙でした。
ラスト、銀幕の向こうにほんのりと陽光が照らされていたので、ホッとしました。
アリエッティ(4)借りへ
©2010 GNDHDDTW
いろんなものを借りてきて生きる。
そんな暮らしも悪くない。
でも借りっぱなしではダメ。
小人たちは、いつかきっと人間にお返しをするはずです。
ぼくはこのアニメがほんとうに好きです~!!
まだ観ていない人、絶対にオススメです!!!
☆全国東宝系公開中

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。