武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

いぶし銀の演技~『新しい人生のはじめかた』

投稿日:2010年2月22日 更新日:

新しい人生のはじめかた
(C)2008 OVERTURE FILMS,LLC.ALL RIGHTS RESERVED
ダスティン・ホフマンとエマ・トンプソン。
米英を代表するベテラン俳優が大人の恋を軽やかに奏でてくれた。
互いに相手の持ち味を引き出すゆとりのある演技を披露。
それを見ているだけでも楽しめる。
CMソングの作曲家ハーヴェイ(ホフマン)は妻と離婚し、ニューヨークで独身生活を謳歌する60代の男性。
楽天家に見えるが、若手作曲家に仕事を奪われそうで、内心焦っている。
一方、空港で働くケイト(トンプソン)は婚期を逃し、ロンドンで母親の面倒をみる40代の女性。
小説を学ぶカルチャー教室に通っているが、どこか人生を諦観しているような……。
大西洋を隔て、別世界で暮らす彼らを交互に映し出し、暮らしぶりやキャラクターを浮き上がらせる。
そして英国にいる娘の結婚式に出席するため、ハーヴェイがロンドンへ来て、2人の素顔が見えてくる。
彼は元妻からダメ夫の烙印を押されていたことがわかってくる。
しかも結婚式で娘とバージンロードを歩くのが妻の再婚相手と知ってショックを受ける。
ケイトも同僚が仕組んだデートで不快な思いをしていた。
そんな2人が空港のバーで出会うシーンが白眉だ。
ウイスキーをやけ酒であおるハーヴェイが、傍で白ワインを飲むケイトに声をかける。
前日、空港でアンケートをとっていた彼女への非礼を詫びたのだ。
それを機に急接近。
お酒が小粋な小道具として光っていた。
予定調和的な展開だが、穏やかなテンポとコミカル風味の演出に引き込まれる。
彼らが大人のルールを守り、品位を保って行動したところにぼくは好感を持った。
人生は縁の積み重ね。
その中でも居心地のいい縁は幸せを呼ぶ。
さわやかなエンディングに心が華やいだ。
監督は英国映画界の新鋭ジョエル・ホプキンス。
1間33分。★★★★(見逃せない)
大阪のシネ・リーブル梅田で公開中
(日本経済新聞2010年2月19日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。