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ダスティン・ホフマンとエマ・トンプソン。
米英を代表するベテラン俳優が大人の恋を軽やかに奏でてくれた。
互いに相手の持ち味を引き出すゆとりのある演技を披露。
それを見ているだけでも楽しめる。
CMソングの作曲家ハーヴェイ(ホフマン)は妻と離婚し、ニューヨークで独身生活を謳歌する60代の男性。
楽天家に見えるが、若手作曲家に仕事を奪われそうで、内心焦っている。
一方、空港で働くケイト(トンプソン)は婚期を逃し、ロンドンで母親の面倒をみる40代の女性。
小説を学ぶカルチャー教室に通っているが、どこか人生を諦観しているような……。
大西洋を隔て、別世界で暮らす彼らを交互に映し出し、暮らしぶりやキャラクターを浮き上がらせる。
そして英国にいる娘の結婚式に出席するため、ハーヴェイがロンドンへ来て、2人の素顔が見えてくる。
彼は元妻からダメ夫の烙印を押されていたことがわかってくる。
しかも結婚式で娘とバージンロードを歩くのが妻の再婚相手と知ってショックを受ける。
ケイトも同僚が仕組んだデートで不快な思いをしていた。
そんな2人が空港のバーで出会うシーンが白眉だ。
ウイスキーをやけ酒であおるハーヴェイが、傍で白ワインを飲むケイトに声をかける。
前日、空港でアンケートをとっていた彼女への非礼を詫びたのだ。
それを機に急接近。
お酒が小粋な小道具として光っていた。
予定調和的な展開だが、穏やかなテンポとコミカル風味の演出に引き込まれる。
彼らが大人のルールを守り、品位を保って行動したところにぼくは好感を持った。
人生は縁の積み重ね。
その中でも居心地のいい縁は幸せを呼ぶ。
さわやかなエンディングに心が華やいだ。
監督は英国映画界の新鋭ジョエル・ホプキンス。
1間33分。★★★★(見逃せない)
大阪のシネ・リーブル梅田で公開中
(日本経済新聞2010年2月19日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)
いぶし銀の演技~『新しい人生のはじめかた』
投稿日:2010年2月22日 更新日:
執筆者:admin