これは面白かった。日経新聞の映画評で迷うことなく★★★★★をつけました。絶対に満足しますよ~!
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久々の本格西部劇。銃弾が飛び交い、砂塵が舞う乾いた大地に熱きドラマが宿る。男の誇りと意地。ダンディズムの真髄を凝縮させた結末に向け、物語がスリリングに昇華していく。
いたって明快なストーリーだ。逮捕した強盗一味のボス、ウェイド(ラッセル・クロウ)を、3日がかりで裁判所のあるユマ行きの列車に乗せるというもの。発車時刻が当日の午後3時10分。それがタイトルになっている。邦題が秀逸。
6人が護送に携わった。その中の1人が、生活苦にあえぎ、200ドルの報酬で引き受けた小牧場主のダン(クリスチャン・ベイル)。誠実で、家族思いの善き父親だが、常に慎重。息子には臆病者に映るところが伏線になっている。
そのダンとウェイドとのやり取りが物語の軸。ウェイドは智略に長け、ふてぶてしい男だ。しかし聖書を愛読し、絵心もあり、どこか憎めない。そんなひと括りにできない複雑な人物をクロウは完璧に演じた。
アパッチ族の襲来やボス奪還を狙う強盗一味の追撃が迫る中、対照的な2人の間に友情めいた連帯感が芽生えてくる。勧善懲悪を排し、男同士の対峙に比重を置いたことで、物語にグンと重みが増した。
老いてなお壮健な賞金稼ぎ(ピーター・フォンダ)、気障で不気味な強盗一味の兄貴分(ベン・フォスター)……。脇を固める陣容も申し分ない。存在感十分。
57年製作の「決断の3時10分」(デルマー・デイヴィス監督)のリメーク。この映画に惹かれたジェームズ・マンゴールド監督が自身のプロダクションを設立し、実現させた。その執念が結実している。
全編、活劇的な面白さで味付けされ、躍動感あふれる映像は非常にパワフル。全く飽きさせない。ラストの5分間は屈指の名場面だった。2時間2分。★★★★★(満点!!)
☆関西では、シネ・リーブル梅田とMOVIX京都で公開中
(日本経済新聞2009年8月21日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)
『3時10分、決断のとき』~理屈抜きに面白い西部劇~!!
投稿日:2009年8月25日 更新日:
執筆者:admin