C)Yellow Bird Millennium Rights AB, Nordisk Film, Sveriges Television AB, Film I Väst 2009
いまのイギリス女王エリザベスⅡ世の曾祖父(ひいじいさん)のお母さん、つまり4代前の君主がヴィクトリア女王です。
この女王の若かりし日々を描いた『ヴィクトリア女王 世紀の愛』が、きょう16日から大阪・梅田ガーデンシネマや京都シネマなどで封切られています。
その映画エッセーをどうぞ。
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大英帝国の全盛を築き、在位64年と英国史上最長の君主だったヴィクトリア女王の実像は、意外と知られていない。
その女王の運命を変えた夫アルバート公との出会いと愛を、史実に沿って綴る。
古今東西、権力の座をめぐり陰謀がうごめくのは歴史の常。
1837年、伯父王ウィリアム4世の死去に伴い、18歳のヴィクトリア(エミリー・ブラント)が女王に即位した時もそうだった。
一番、露骨に動いたのが、何と母親のケント公夫人(ミランダ・リチャードソン)。
幼少時から彼女を思うがままに操ってきた母親が自ら権力を欲し、摂政政治の断行を思い立ったのだ。
母娘の確執がいつ爆発するかが前半の見どころとなる。
さらに政治家や外国の王家も絡み、やがてベルギー王が甥のドイツ貴族アルバート(ルパート・フレンド)を女王の結婚相手に差し向ける。
もろに政略結婚だが、互いに惹かれ合い、抵抗勢力をはねのけ、愛の力で結ばれる。
緊張した面持ちで初めて対峙した2人の熱い眼差しが、心のときめきを見事に表現していた。
「祖国と民衆のために人生を捧げる」と宣言した女王に、「この命が尽きるまで愛する」と打ち明けたアルバートは、どこまでも謙虚で献身的だ。
気丈で頑固な女王が熱心なあまり政治の舞台でアクセルを踏み入れると、間髪入れず夫がブレーキをかける。
良妻賢母と帝国の顔。家庭と国家との板ばさみに苦しむ女王の若き日の姿を軸に、夫婦の吐息をフッと映像に吹き付ける。
理想のカップルと謳われ、夫と死別後、40年間も喪服姿で通した女王の気持ちがわからないでもない。
ただ人間ドラマにしては、歴史を追いすぎた感があり、説明口調になっていたのが残念。
監督はカナダ出身のジャン=マルク・ヴァレ。
1間42分。★★★(見応えあり)
(日本経済新聞2010年1月15日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)
イギリス映画『ヴィクトリア女王 世紀の愛』
投稿日:2010年1月16日 更新日:
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