武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

バルト3国レポート(2009年夏)

バルト3国リポート(12)~

投稿日:2009年12月22日 更新日:

リガ映画博物館(2)
ラトヴィアの首都リガで、意外な事実を知りました。
映画史にさん然と輝くセルゲイ・エイゼンシュテイン(1898~48年)がこの町で生まれたことを~。この人の業績をたたえる映画博物館があったのです。
エイゼンシュテインは、カットを巧みにつなぎ合わせることでドラマ性が高まるモンタージュ理論を確立させた旧ソ連映画の巨匠です。まぁ、いわば「映像の言語」ですね。
いまでは当たり前のことですが、なんでも最初に考え、それを実践に移した人は歴史に残ります。
その理論を、代表作『戦艦ポチョムキン』(25年)で生かし、すさまじい臨場感をかもし出しました。映画をかじったことのある人なら、題名はご存知でしょう。
『ストライキ』(24年)、『十月』(28年)、『アレクサンドル・ネフスキー』(38年)などもよく知られていますね。
激烈と言っていいほどテンポのいいカット割りは、なるほど迫力満点で、グサッと胸に突き刺さります。学生時代、『戦艦ポチョムキン』のクライマックス、「オデッサの階段」のシーンをはじめて観たときのインパクトは忘れられません。大昔の映画なのに……、すごいことです。
エイゼンシュテインは、ソ連の社会体制を賛美する(?)社会主義リアリズムの映画に貢献した人とあって、ぼくはてっきりロシア人とばかり思っていました。だから驚きました。
リガ生まれといっても、ラトヴィア人ではありません。ユダヤ系で、ドイツ人とスゥーデン人の血も入っているそうです。本人は「ソ連人」と意識していたようですが。当時、ラトヴィアはソ連に組み入れられていましたからね。
父親は、リガの街に多くの建造物を残している著名な建築家(ミハイル・エイゼンシュテイン)で、ひじょうに裕福な家庭だったそうです。そこで17歳まで暮らしていたんです。ぼんぼんです。
リガ映画博物館(3)
博物館には、いかにも映画通といった感じの人たちが訪れていました。作品の上映、資料や書物、写真パネルの展示だけで、じつに簡素なものでしたが、「リガが生んだ偉大な映画人」を知ってほしいという市民の気持ちがひしひしと伝わってきました。
偶然、見つけた博物館での大きな収穫。ぼくはすごく得をした気分に浸っていました。

-バルト3国レポート(2009年夏)

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。