武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

『キャピタリズム マネーは踊る』~マイケル・ムーアの怒り

投稿日:2009年12月7日 更新日:

アメリカは、言わずと知れた資本主義国家です。その根幹を見据えるドキュメンタリー映画『キャピタリズム マネーは踊る』がいま公開されています。
いろんな意味でかなり面白いです。以下、ぼくの映画エッセーを載せます。
   *     *     *     *     *     *
キャピタリズム・
(C)2009 PARAMOUNT VANTAGE,A DIVISION OF PARAMOUNT PICTURES CORPORATION,AND OVERTURE FILMS,LLC.ALL RIGHTS RESERVED.
「金を返せ!」。マイケル・ムーア監督の怒りが渦巻いていた。
昨秋来の世界同時不況の原因を作りながら、その後も私利私欲に走るウォール街の金融機関の役員を税金泥棒呼ばわりし、逮捕しようとするのだから。シニカルな笑いを誘うパワフルな行動力に脱帽!
銃社会をえぐった「ボウリング・フォー・コロンバイン」(2002年)、対テロ戦略を露呈させた「華氏911」(04年)、医療問題に迫った「シッコ」(07年)。
こうしたドキュメンタリー映画を通して、米社会の恥部・暗部をあぶり出してきたムーア監督が、今回挑んだテーマは資本主義とカネ。
何と壮大な~! 自ら集大成と位置づける。撮影開始後に金融危機が起きたという。
住宅ローンの遅延で自宅を追われる人、その裏で利益を上げる悪徳不動産業者、突然のリストラに戸惑う工場労働者、低賃金に甘んじるパイロット……。
日本と状況が異なる点が多いけれど、次々に示される実態は決して無縁ではない。
圧倒的多くの国民に犠牲を強いる歪んだ資本主義に疑問を投げかけ、格差社会が広がる現状から民主主義にまで言及し、金融危機のカラクリを暴いてみせる。
話の展開は強引とはいえ、お家芸の挑発的な突撃取材に拍車がかかり、加速度的に勢いが増す。気がつけば、エンディングといった具合。
一番印象深かったのは、専門家ですらデリバティブ(金融派生商品)を正確に説明できないシーン。得体の知れない金融経済の一面を垣間見た気がした。
そして金儲けのためには弱者を食い物にする人間の欲深さを改めて実感させられた。
全てシロクロはっきりとつけ、多分に恣意的で、娯楽色が強い。だから非常にわかりやすい。この監督の常套手段だ。それを承知の上で観てほしい。2間7分。★★★★(見逃せない)
(日本経済新聞2009年12月4日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)
キャピタリズムのHP

-映画

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

「大阪映画』で最初に撮られたハリウッド映画が『やさしい狼犬部隊』と判明!!

「大阪映画』で最初に撮られたハリウッド映画が『やさしい狼犬部隊』と判明!!

大阪でハリウッド映画のロケ撮影が行われたのは、1989年の『ブラック・レイン』が最初と思っていました。 リドリー・スコット監督が松田優作(遺作)を主演に起用したあの有名な犯罪アクションですね。 ところ …

映画の地を訪ねて~兵庫・芦屋~「細雪」

映画の地を訪ねて~兵庫・芦屋~「細雪」

今日は雨。 これで桜が散ってしまうのでしょうね。 儚げ……。 散りゆく桜花を目にすると、いつも切なく思ってしまいます。 桜と言えば、『細雪』。 3年前、芦屋川を散策し、こんなエッセーを記しました。   …

ニャンコが人の心に安らぎを~日本映画『先生と迷い猫』

ニャンコが人の心に安らぎを~日本映画『先生と迷い猫』

  (C)2015「先生と迷い猫」製作委員会 普段、目障りに思っているのに、いなくなると、無性に寂しさが募る。   人生ままあること。   猫を介してその心情を綴り、ほっ …

舞台『フェイドアウト』東京公演の稽古が終わりました!

舞台『フェイドアウト』東京公演の稽古が終わりました!

昨日、大阪・新町のイサオビルで舞台『フェイドアウト』東京公演の稽古を終えました。 一昨日から引き続け、トータルで7回も通し稽古を貫徹。 大阪2回、広島1回の公演で「花子」役を務めた原田智子さんの代わり …

心に染み入る映画~『愛、アムール』

心に染み入る映画~『愛、アムール』

今年のアカデミー賞の外国語映画賞を受賞した珠玉の作品です。   フランス語でありながら、作品賞(英語の作品)にもノミネートされていました。   テアトルシネマグループ(テアトル梅田 …

プロフィール

プロフィール
武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。