武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

画家、藤田嗣治が生きた2つの時代、日本映画『FOUJITA』

投稿日:2015年11月14日 更新日:

昨夜は、大阪・テイジンホールで開催された盲導犬チャリティーコンサートでした。

 

今回でFinal。

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そのせいか、満席でした。

 

ちょかBandは前座で大きな笑いを取り、めちゃ盛り上げましたよ~(^_-)-☆

 

凄腕のピアニスト、キムタクさんが共演してくれはりまして、サウンドにグッと深みが出ました。

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打ち上げ、楽しかったなぁ~!!!

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写真の左端がキムタクさん、ぼくの右がこのチャリコンの牽引役、秋山君(高校の同窓生)、前の女性はキムタクさんの娘さん。

 

今朝、気分良く目覚めたら、フランスから悲惨な事件を報じるニュースが飛び込んできました。

 

首都パリで同時多発テロ!!

 

何の罪もない市民が100人以上犠牲になったようです。

 

ほんまに腹が立つ!

 

憤りでハラワタが煮えくりかえっています。

 

絶対に許せない。

 

奇しくも、そのパリで戦前、一時代を築いた日本人画家、藤田嗣治に迫った映画『FOUJITA』が今日から公開されています。

 

この映画は観させます。

 

 

☆     ☆     ☆     ☆

 

オカッパ頭にロイド眼鏡の独特な風貌で知られる画家、藤田嗣治(1886~1968年)。

 

戦前のフランスと戦時中の日本という対極的な世界を生き抜いたこの芸術家に、小栗康平監督が透徹した眼差しを注いだ。

© 2015「FOUJITA」製作委員会/ユーロワイド・フィルム・プロダクション

© 2015「FOUJITA」製作委員会/ユーロワイド・フィルム・プロダクション

薄暗いアトリエで鬼気迫るオーラを放ちながら、画布に向かうフジタ(オダギリジョー)。

 

どこまでも静謐で深奥なる映像。

 

冒頭から一気に〈小栗ワールド〉に引きずり込まされる。

 

前半は各国からボヘミアン的な画家がパリのモンパルナスに集まった1920年代。

 

フジタは日本画の技法を油彩画に採り入れた「乳白色の肌」で裸婦を描き、時代の寵児となる。

 

そこではデカダンな空気が濃厚にあぶり出される。

© 2015「FOUJITA」製作委員会/ユーロワイド・フィルム・プロダクション

© 2015「FOUJITA」製作委員会/ユーロワイド・フィルム・プロダクション

パーティーの乱痴気ぶりはフェリーニ映画を彷彿とさせるほどで、その絢爛たる人工美に圧倒された。

 

「バカをすればするほど自分に近づく。絵がきれいになる」

 

自由奔放を貫く画家が本心を吐露する。

 

この台詞が鮮烈に胸を突く。

 

そんな主人公が後半では一転、別人のように変身する。

 

フランスから帰国し、5人目の妻(中谷美紀)と暮らす戦時下の日本。

 

陰鬱な社会の中、質素な国民服を着て、無縁と思われた戦争画を描き続けるのだ。

 

それもこってりと質感のある濃厚な油絵ばかり。

 

パリでは淡彩な画風だったのに……。

 

この人の反逆性の表れなのだろうか。

 

文化、価値観、主題、技法、精神性。

 

全てにおいて相違・対比をことさらに際立たせる。

 

それが映画のテーマなのかもしれない。

 

時折、ハッとさせられるほど佳麗な光景が挿入される。

 

とりわけ日本の自然を切り取ったショットが秀逸。

 

イメージを膨らませる語り口の巧さに磨きがかかる。

 

 

小栗監督、10年ぶりの新作。

昨年の今ごろ、小栗監督はこの映画のことをポツリポツリと語ってはりました

昨年の今ごろ、小栗監督はこの映画のことをポツリポツリと語ってはりました

デビュー作「泥の河」(1981年)以来、34年間に6本という寡作家。

 

原点回帰ともいえる作品だった。

 

2時間6分

 

★★★★★(今年有数の傑作)

 

(日本経済新聞夕刊に2015年11月13日に掲載。許可のない転載は禁じます)

 

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。