武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

『列車の到着』の映像、100余年の時を隔てて~

投稿日:2009年5月24日 更新日:

昨日、5年前に卒業したゼミ1期生(関西大学社会学部マスコミュニケーション学専攻)の同窓会。すっかり社会人に変貌していた教え子たちと飲んで語らい、じつに楽しいひと時を過ごしました。
ちと深酒してしまって、今朝は久しぶりに二日酔い。でも気分はさわやか~♪ 何気に映画関連の資料を眺めていたら、興味深い写真が眼に留まりました。
列車の到着(1)
列車の到着(2)
モノクロのSLは、1895年の9月ごろ、世界で最初の映画シネマトグラフで撮影された映像です。場所はフランス南部プロヴァンス地方のラ・シオタ駅。マルセイユから30分ほどのところ。そのプラットホームに入ってきた列車をとらえた映画史上、有名な場面です。
撮影したのは、シネマトグラフを発明したリュミエール兄弟。彼らはほかにも日常の様子を「動く写真」としてフィルムに焼きつけましたが、一番人々を驚かせたのが、躍動感あふれるこの『列車の到着』でした。
それから106年後の2001年夏、ぼくはラ・シオタ駅のプラットホームに立ち、新型の電車が到着するところをカメラに収めました。奇しくもリュミエール兄弟が撮影した位置とほとんど同じでした~!!
ふたつの写真を見比べると、100余年の歳月の隔たりを実感できます。
地中海に面した海辺の町ラ・シオタには、世界最古の映画館といわれるエデン座がありました。ここでシネマトグラフの映像を有料で上映していたというのです。
ぼくが訪れたとき、エデン座は廃屋同然の状態でした。10数年前に閉館に追い込まれたとか。映画博物館に改造する計画があったので、いまでは立派な博物館に変身していることでしょう。
エデン座

-映画

執筆者:


  1. 細谷久行 より:

    かねてから気になっていたが今回初めて観た。古い映画だが今観てもいささかも価値を減じるものではない。まず圧倒されるのはグロリア・スワンソン演じる往年の栄光にとり付かれ現実を見失った伝説的大女優の、ひとときも、どんな場面もおろそかにしない入魂の演技だ。

    ハリウッド映画界の内幕物といえるが、その栄枯盛衰にあって取り残されたとも知らず、否、そうである事を受け入れることが出来ない往年の大女優の悲劇である。

    冒頭、背後から銃で撃たれプールに浮かぶ三文脚本家ウィリアム・ホールデンの回想という倒置的な設定をとり終末を提示する。そこからホールデンのナレーションで舞台は半年前に遡る。

    自己の脚本が売れず車のローンに追われ貧窮の生活をおくるジョー・ギリス(ウィリアム・ホールデン)がふとしたきっかけで往年の大女優ノーマ・デスモンド(グロリア・スワンソン)の荒れ果てた庭の大邸宅に迷い込む。そこで一時は追い返されるがジョーが脚本に携わると言う事でノーマの脚本の添削を頼まれそれがきっかけでジョーはそこに宿泊することとなる。その大邸宅にはクールでコツコツと任務をこなし忠実にかしずく執事マックス(E・V・シュトロハイム)もいた。

    ノーマはジョーに高価な装飾品や衣服を買い与えていくうちにジョーに抜き差しならぬ情愛が乗り移っていった。しかしジョーは次第にノーマの情念の虜でいることが疎ましくなってゆく。

    ノーマは容色衰えたりとも大女優であるという確信揺るがず往年の栄光にしがみつき銀幕に復帰する事を信じて疑わない。

    一方ジョーは顔見知りの若いベティ・シェファー(ナンシー・オルスン)と再会し、ジョーの脚本の書き直しを共にすることになる。そのため毎夜ノーマの屋敷を空ける日々が続く。やがて婚約者がいるのにベティはジョーに愛を告白する。

    ノーマはそれを察知し嫉妬のあまり手首を切る。

    それを知ったジョーは邸宅を訪ねてきたベティにすべての真実をぶちまける。そして荷造ろいをして邸宅を出て行こうとする。

    半狂乱になったノーマはジョーの背後に向けて銃を三発発射する。

    この事件に駆けつけた警察官や新聞記者らの質問尋問に狂気したノーマはキャメラやフラッシュを本物の撮影だと思い込みマックスを撮影監督に見立て静々と階段を降りながら自作に迫真の演技をする。まさに凄絶な幕切れである。

    • admin より:

      細谷さま
      コメント、ありがとうございます。ビリー・ワイルダーの傑作ですね。グロリア・スワンソンが自身の境遇と重ね合わせ、迫真の演技を披露していました。

  2. 細谷久行 より:

    『 フォレスト・ガンプ 』 ~ 俊足と強運、そして栄光と別れ

    この映画は人生いかに生きるべきか、どう勝利すべきかを雄弁に物語っている。人生は頭の良さだけで成功する
    ものではない。努力を重ねてもどうにもならない。人生において幸福と成功をもぎ取るには、誠実さ、謙虚さ、
    一途ながむしゃらさ、一度決めたらそれをやり抜く頑固さ、それと運が必要である、ということをこの映画は言いたいのであろう。それがスクリーン上に見事に具現化されたのが当主人公 フォレスト・ガンプ ( トム・ハンクス ) である。
    IQ はやや低いとはいえ、俊足と並外れた運動神経、さらには持ち前の強運によって、次々と栄光をものにしていく。この映画を一貫するキーフレーズは 〈 ひたすらに走ること 〉〈 出会いと別れ 〉〈 固い友情と信頼と愛の絆 〉の三つではなかろうか。
    物語は、バス停に隣り合わせた客人にフォレスト・ガンプが問わず語りに「回想 」を話しかけるという形式ではじまる。子供のころ、スクールバスの席を譲ってもらったことから仲良しになったジェニーのこと。
    その後、ジェニーと愛し合う様になり、ガンプの人生行路にこの薄幸の女は、陰に陽に現れる。ガンプの
    いじめっ子らからひたすら走ってかわすことから、その延長線上にアメフトの選手になり、その大学を卒業でき、彼の気性にあった陸軍に入隊するという経過をたどる。ベトナム戦争の亡き戦友との約束を果たして大富豪となる、とまあひたすら走るということが彼を栄光の座へと押し上げる、というサクセスストーリーでもあるが、もう一方、彼の母からの、口移しの人生訓が彼を成功者へと導いたアメリカンドリームの側面も見落とせない。いつも頭からはなれなっかたジェニーとの再開。彼女はガンプの息子の母親になっていた。やがてジェニーとの悲しい別れ。そのガンプの母の口癖 ” 人生は箱入りのチョコレート、食べるまで中身はわからない “、 つまり人生は先が見通せない不測なものだから心せよ、ということか。とにもかくにもこの映画には人生を考えるヒントに満ちてる。

    • admin より:

      細谷さま
      コメント、ありがとうございます。返信が遅れて申し訳ございません。
      しっかり映画を読み込んではりますね。

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。