サンティアゴ巡礼--。
なんとなくロマンをかき立てられますね。
この巡礼の道を舞台にした映画『星の旅人たち』がきょうから公開されています。
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旅はよく人生に例えられる。
その逆もしかり。
山あり、谷あり。
そして必ず出会いがある。
本作はまさにそれを映像化したヒューマン・ドラマ。
終着点に向け、ひた歩く主人公への共感が後味の良さに繋がった。
サンティアゴ巡礼の道。
この設定にまず惹かれる。
フランス南西部からピレネー山脈を経てスペイン北部を横断し、聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラへと至る、総距離800㌔にも及ぶルートである。
出発点の町に米国人の初老の眼科医トム(マーティン・シーン)がやって来る。
妻の死後、疎遠になっていた1人息子ダニエル(エミリオ・エステヴェス)が巡礼中に事故死し、その遺骸を引き取るためだ。
息子は何を思ってこんな所に来たのか。
トムが抱いた疑問が映画の主題となる。
ただ、父親が巡礼の旅を始めた動機がやや希薄。
もう少し内面の苦しみ、ダニエルとの葛藤を際立たせてほしかった。
監督は主演シーンの長男エステヴェス。
役柄だけでなく、映画全体がこの親子関係を色濃く反映させている。
聖地を目指すシーンの姿は演技を離れていた。
他の旅人との邂逅が脇筋(サブプロット)として面白い。
グルメで陽気なオランダ人男、チェーンスモーカーの厭世的なカナダ人女性、自己主張の強いアイルランド人作家……。
みな個性豊か。
しかも秘密を抱えている。
ある程度、予測できるが、彼らが家族のような間柄になっていく様が実にほほ笑ましい。
ぼくは数年前、ほんの少しだけ巡礼の道を歩いた。
映画の中で変化に富む自然が次々と映し出され、心が和らいだ。
風景美が作品のトーンを決定づけるほど大きな要素になっている。
トムは何を考えながら歩いていたのだろう。
与えられた人生を精一杯、生きるだけ……。
そんなつぶやきが聞こえてきた。
2時間8分
★★★
6月 9日(土)~シネ・リーブル梅田
6月16日(土)~シネ・リーブル神戸
6月30日(土)~京都シネマ
(日本経済新聞2012年6月8日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)
☆巡礼ゴールは、聖地サンテイアゴ・デ・コンポステーラ。
壮大な大聖堂がそびえています。
サンティアゴ巡礼の道を歩く~映画『星の旅人たち』
投稿日:2012年6月9日 更新日:
執筆者:admin