武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

お酒 エッセー 日記

何とも刺激的な富山への1泊旅行~(^_-)-☆

投稿日:

【1日目】

3、4の両日、富山へ旅立ちました。

旅は、4月の静岡への「ウイスキー旅行」以来です。

大阪駅から北陸本線の特急「サンダーバード号」に乗って金沢で下車、そこでJRいしかわ鉄道の鈍行列車に乗り換え、終点の泊駅に到着しました。

9時12分に出て、14時5分に着いたので、5時間も電車に揺られていたわけです。

道理でお尻が痛かったけれど、在来線の列車の旅は味わいがありました。

泊駅は、新潟県境の朝日町にあります。

誰一人いない駅前には、もちろんタクシーなんぞ停まっているわけがありません。

そこで、タクシー専用電話でタクシーを呼び、内陸部の黒部山系のすそ野にある百河豚美術館へ向かいました。

「百河豚」と書いて、「いっぷく」と読みます。

大阪の老舗フグ料理店「太政(ふとまさ)」の創業者、青柳政二氏が1983年に故郷のこの地に建てた私設美術館です。

「百河豚」とは、青柳氏の号で、江戸期の陶芸家、野々村仁清のコレクションを中心に、仏像、浮世絵、工芸品などが展示されています。

実は、ここに来たのは2度目です。

1999年の11月、行方不明になっていたお多福人形を探し求め、この美術館でようやく対面にこぎつけました。

お多福人形のことを、大阪では「おたやん」と呼んでいます(今では死語かな)。

このおたやん、明治初期に大阪ミナミ・法善寺横丁に開店したぜんざい店「めをとぜんざい」(今のお店とは関係なし)の飾り窓に鎮座していた初代のもので、名は「お福さん」と言います。

「めをとぜんざい」の常連だったあのオダサクこと、織田作之助さんが「法善寺のシンボル」と某エッセイに書いてはりました。

この日は、まだちゃんと展示されているのかを確かめるため、そして「お福さん」と再会するためにやって来たのです。

池に浮かぶピラミッド型の美術館の正面扉を開けると、目の前に「お福さん」がガラスケースの中で鎮座してはったので、びっくり!

13年前には、2階展示室にいてはりましたから。

今、13年前と書きましたが、実は10年前、大阪でオダサク展が開かれたときに一度、帰郷してはりまして、ぼくも会ってるんです。

だから厳密に言うと、10年ぶりの再会ですね。

かなり黒ずんでいたのは、年を取りはったからかな(そんなアホな!)。

「よぉ、お越し。待ってましたんやでぇ」

目が合った瞬間、「お福さん」が声をかけてくれはり、ずっと語らってましたわ~ (笑)

係の女性が「あの人、何かけったやなぁ」といった顔つきでチラチラ見てはりましたが……(笑)。

ぼくは、このおたやんの遍歴をすべて知っておりまして、そのうちドカーンと公にします~

お楽しみを!

館内は撮影禁止になっていたので、この写真は前回撮ったもんです~

お福さんと再会を果たしてから、いろんな石像が建つ庭を散策し、青柳氏はロマンチストで、郷土愛に燃えたお人やったんやなぁとわかりました。

その後、隣接する「不動堂遺跡」を見学しました。

前回は時間が遅くなり、スルーしたので、この日はのんびりと~。

そこは、5000年前の縄文時代中期前葉の集落跡で、竪穴式住居が3棟再現されていました。

ヨーロッパでも同じような古代の住居(古代ケルト人の前 )をあちこちで目にし、つくづく人間が考えることはよく似ているんやぁと改めて実感した次第。

誰もいない芝地に立ち、黒部山系の山々を眺めていると、ポツリ、ポツリと雨が降ってきました。

あわててスマホでタクシーを呼び、泊駅ではなく、一駅西側の入善駅へ向かい、そこから鈍行列車で富山駅へ。

そして駅からほど近いアパホテルに投宿し、天然温泉で汗を流してから、足の赴くまま街を散策しました。

ビールがほしい、どこか店に入ろうとしたら、「親爺」という店名に惹かれ、大衆居酒屋へ郷土料理店に入りました。

地酒を味わいながら、オススメのお造り(刺し身)、ホタルイカの沖漬などをいただいていると、店の大将がテレビの阪神vs巨人戦を食い入るように見てはったので、「やっぱり巨人ファンですよね」と訊くと……。

「そういうことを超越して、富山は正力松太郎さんの故郷ですからね」

えっ~!

思わず、「その新聞社にいてましたけど、とことん阪神ファンですねん」と言うと、大将と東京から出張で来ていた巨人ファンの隣の男性がゲラゲラ笑い出し、和気あいあいと話が弾みました。

この店、プロ野球の選手がちょくちょく来てるみたいで、大将からいろいろ裏話を聞かせてもらいました~。

そのあと、うちの近くの英国風サンドイッチ店「ザ・チューブ」の店長のオススメで、スコティッシュ(?)パブ「ポット・スティル」へ。

富山にこんな飲み屋があるとは知らなんだ。

マスター自家製のハギスが絶品でした!

ここでも話が弾み、素敵な富山の夜を過ごせました。

【2日目】

昨夜は結構、飲んだのに、すこぶる「ええお酒」だったので、二日酔いもせず、すっきり目覚めました。

富山駅構内のカフェで朝食を済ませ、鈍行列車で高岡へ行き、ローカル線の城端(じょうはな)線に乗り換え、2両のディーゼル車に揺られ、油田駅で下車しました。

「油田」は、石油でも産出していたのかと思い、「ゆでん」と読むのだと思ってましたが、「あぶらでん」と読みます。

江戸時代、この辺りが、ナタネ油の産地だったので、そう名づけられたそうです。

無人駅のすぐ近くに、目的の三郎丸ウイスキー蒸留所(若鶴酒造)がありました。

この辺り、「丸」は田んぼのことらしく、「太郎丸」や「次郎丸」など「丸」のつく地名が多いとのこと。

この蒸留所は以前から気になっていたところで、10時40分からの見学ツアーに参加しました。

ガイド役の男性スタッフの説明が非常に丁寧でわかりやすく、あっという間に1時間が過ぎました。

日本コカコーラ・ボトラーズの傘下に入っていたとは知らなかった。

見学を終えてから、試飲を楽しみ、午前中から早くもほろ酔い気分に。

ええ塩梅、ええ塩梅~(^_-)-☆

お土産の日本酒とウイスキーを購入し、油田駅で高岡行きの列車を待っていたのですが、定刻が過ぎてもなかなか来ない。

そのうち、大雨でこの路線の南の方で鉄道が不通になっているとわかりました。

確かにどしゃ降りの雨、雨、雨でした。

えらいこっちゃ!

こらアカンと思い、すぐに蒸留所へ戻り、タクシーを呼んでもらおうとしたら、女性スタッフが「車でお送りしますよ~ 」

やった~!

ここの蒸留所の従業員はみな愛想がよく、すごく親切でした。

ありがたい、ありがたい~!!

高岡に到着後、駅前で気分よく富山名物のブラック・ラーメンを食べ、さぁ大阪へ帰ろうと駅へ向かうと……。

ありゃ、北陸本線をはじめ周辺の在来線が軒並み、大雨でストップ~(>_<) しかも、再開の見込み立たず。 ガーン、動かれへんし、帰られへんがな。 またまた、えらいこっちゃ~ 翌日(5日)、心斎橋大学の講義があるから、絶対に今日中に帰阪せなあかん。 はて、どうすべきか。 こういう場合、焦ったらあきまへん。 頭を柔らかくするためにもビールを飲むに限ります~ (笑) ヨーロッパの「ケルト」の取材で体験済みです。 そして缶ビールをグビリとやると、頭がひらめいた! 2つの「帰阪ミッション」のプランが浮かんできました。 第1プラン……。 北陸新幹線が動いているとわかったので、新高岡駅からその新幹線で東京へ向かい、東海道新幹線で大阪へ行くというもの。 でも、大阪とは逆の東京へ行くのが心理的にどうにも抵抗があり、味気ない新幹線ばかりで帰るのも芸がないと思い、さらに値段が高くつく。 そう考えると、第1プランを捨てざるを得ませんでした。 そこで、第2プラン……。 高岡市内で路線バスが動いるのを見て、「そや、高速バスがあるんやと!」と思ったんです。 路線バスで新高岡駅へ行き、北陸新幹線で金沢駅へ、そこからバスで大阪へ向かう。 別に名古屋行きでも、あとはどうにかなりますわ。 で、金沢駅に着き、高速バスのチケット売り場に駆けつけると、どの便もすべて満席でした~! ガーーーン!! またまたまた、えらいこっちゃ~((+_+)) ビールを飲むことすら忘れ、落胆し、カウンター近くのベンチに腰を下ろした直後、「お客様、17時30分発の名古屋行きにキャンセルが出ました 」と女性スタッフの声が。 やった~!!! まるで、神の声に聞こえましたがな。 発車まで時間があったので、金沢駅構内のカフェでクラフトビールを飲み、やはりそれだけでは済まず、カウンター割烹のお店へハシゴし、冷酒セットもいただきました。

名古屋行きの高速バスは定刻通りに発車しましたが、ルートになっている北陸東海自動車道の一部区間が大雨で閉鎖され、迂回するとのことで、名古屋到着がかなり遅れるというアナウンスがありましたが、もう開き直ってましたわ、ハハハ(笑)

22時前に名古屋に着き、すぐさま新幹線に乗り、22時50分ごろに新大阪に到着。

名古屋に定刻通りに着いたら、近鉄特急で帰るつもりでしたが、まぁ、しゃあないです。

そんなこんなで、やっとこさ、大阪にゴールイン~!

整理すると、富山の高岡⇒(バス)⇒新高岡⇒(北陸新幹線)⇒金沢⇒(高速バス)⇒名古屋⇒(東海道新幹線)⇒新大阪。

なかなか渋いルートでした。

結局、高岡で「帰阪ミッション」を実行し、完遂するまでに10時間もかかりましたわ。

まぁ、海外取材では、この手の経験はザラなので、難易度は低かったですが~ (笑)

一泊二日の旅にしては、めちゃめちゃ濃密な内容でした。

それにしても、雨を侮ったらあきませんね。

ホンマに地球がけったいなことになってきました……。

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。