今朝、電話がかかってきました。
受話器の向こうははつらつとした声の女性です。
そのやり取りを再現します。
「おはようございます。東京の広報堂という広告会社の社員で、ホンダと申します」
「おはようございます」
「武部さんでいらっしゃいますか。『イングランド「ケルト」紀行』を書かれた方ですよね」
「はい、そうですが……」
「あのご本、素晴らしいですね。イギリスをあんなふうに斬った書物は見たことがありません」
「あ、あ、ありがとうございます」
「じつは産経新聞の1月16日付の朝刊の中ほどに1面を使って、『日本の美しい芸術特集』をいう大々的な広告を打つことになりました。大阪じゃなくて、東京の産経新聞ですが」
「へーっ、そうなんですか。でもイギリス絡みの本が、どうして『日本の美しい芸術特集』なんですか」
「えっ……、それは……、日本人の作家だからです。それはさておき、そのページに22名の作家先生のご本を紹介しようと思っています」
「ぼくがそのひとりに!?」
「そうなんです」
「えらい光栄ですな~」
「で、縦8センチ、横9・5センチのスペースに、ご本の表紙、その紹介文、先生のプロフィールを添えます。オールカラーですから、引き立ちますよ」
「わーっ、すごいですね」
「すごいでしょ。で、広告なので、当然、掲載料が派生するわけでして……」
「????」
「はい、広告ですからね」
「広告ですか……」
「はい、1件につき24万円です」
「えっ! 24万円ですか。高いのか安いのか……」
「これは安いと思います。なにしろ全国紙の全面広告なのですから」
「なるほど。で、出版社(彩流社)に声をかけはりましたか?」
「えっ、出版社ですか?」
「それは当然でしょ、こういう場合、著者に直接、言うのではなく、出版社に申し出るのが当たり前だと思いますよ」
「あのぅ、自費出版ではないんですか?」
「ちゃいますよ。ちゃんと出版社から出してもらっている商業出版です」
「……」
「さっき作家先生と呼んでくれはりましたけれど、作家先生なら自費出版しませんよ。どこからぼくの電話番号をお知りになったんですか?」
「……」
ガチャン。
途中から怪しいと思っていました。
ネットで広報堂を調べると、なにやら胡散臭い話がいっぱい載っていました。
確かに広告は掲載しているようですが、どうも臭い……。
みなさん、気をつけましょう。