武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

なんと黒人刑事がKKKに潜入捜査!~『ブラック・クランズマン』(22日~公開)

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ブラック・ムービー(黒人映画)の旗手、スパイク・リー監督が渾身の力を込めて撮った犯罪サスペンス。

約半世紀前の物語とはいえ、人種や宗教で分断が進むアメリカの今を浮き彫りにしている。

この監督初のアカデミー受賞作(脚色賞)。

(C)2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.

不朽の名作『風と共に去りぬ』(1939年)のアトランタ陥落シーンが冒頭に映される。

南北戦争での南軍敗北による奴隷制崩壊の象徴的な場面。

その後もしかし、黒人差別が続くという意味深な序章である。

一転、1972年の田舎町に転換する。

過激なブラック・パワーが吹き荒れる中、青年ロンが唯一、黒人警察官として地元警察署に採用される。

署内でも差別が横行する歪な時代だった。

ロンに扮するジョン・デヴィッド・ワシントンは名優デンゼル・ワシントンの息子。

父親がリー監督の代表作『マルコムX』(92年)で主演していた。

まことに奇妙な縁……。

この主人公が白人至上主義の秘密結社KKK(クー・クラックス・クラン)への潜入捜査に着手する。

相棒の白人刑事フリップ(アダム・ドライバー)がユダヤ人というのがミソ。

(C)2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.

思いもよらぬ超変化球の作戦に度肝を抜かれるだろう。

非常にシリアスな内容で、いつ正体がバレるのかとハラハラさせられる。

なのに全編、ユーモアが散りばめられ、笑いを生む。

その〈ゆとり〉が本作の隠し味になっていた。

「アメリカ・ファースト」を連呼するKKKの最高幹部(トファー・グレイス)。

その姿がトランプ大統領を彷彿とさせ、かなり政治的な映画といえる。

聡明な黒人対愚かな白人。

一見、単純な構図だが、差別を許さない白人もきちんと描かれている。

(C)2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.

何よりもこのドラマが実話であることに驚かされる。

歯に衣着せぬ発言で知られるリー監督ならではの風刺の利いた一作だった。

2時間15分

★★★★(見逃せない)

☆3月22日(金)より、全国公開
TOHOシネマズ梅田/TOHOシネマズなんば/MOVIX京都/シネ・リーブル神戸……。

(日本経済新聞夕刊に2019年3月22日に掲載。許可のない転載は禁じます)

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。