大阪で開催中の第13回大阪アジアン映画祭。
初春のイベントとしてすっかり定着してきた感があります。
今年は何かと忙しく、1本しか観れていません。
その1本が昨夜、シネ・リーブル梅田で上映された日本・ミャンマー合作映画『僕の帰る場所』(2017年)。
映画祭の特別招待作品。
政情不安から祖国ミャンマーを離れ、日本に移住したミャンマー人の家族に焦点を当てたヒューマンドラマです。
幼い2人の男の子は日本語しか解せず、習慣から感性まですべてが日本人になっています。
父親は居酒屋で、母親はクリーニング店で必死に働いています。
生活は苦しけれども、愛情に満ちあふれた素晴らしい家族です。
ただ、就労ビザが切れており、いつ入国管理官がやって来るのかわからず、ビクビクしています。
とりわけ母親の精神的なストレスが激しい。
そんな家族が分断されます。
母親は子供を連れてミャンマーの実家へ里帰り、父親は金を稼ぐため日本に留まるのです。
ここから目が離せなくなります。
祖国へ渡った子供たちの言動がドラマをぐいぐい引っ張っていきます。
ミャンマー人でありながら、祖国になじめず、ひたすら日本を恋しがる子供……。
これは実際のミャンマー人家族をモデルにした実話です。
予備知識を持たずに銀幕と対峙しました。
映画が始まって10分ほどまで、ぼくはてっきりドミュメンタリー映画だとばかり思っていました。
カメラの手振れはないものの、やたらクローズアップが多く、やや粗い画像と全体の雰囲気からしてそう思ってしまったのです。
この作品はしかし、まぎれもなくドラマです。
家族の4人がすべて素人ということもあり、ドキュメンタリー映画っぽく見えたのでしょう。
兄役に扮した男の子の演技には目を見張らされました!
難民問題に翻弄される子供たち。
彼らのアイデンティティーはどうなっていくのか……。
社会性のあるテーマで、どんどん引き込まれていきました。
監督、脚本、編集を手がけたのは大阪・豊中出身の藤元明緒さん。
大阪にあるビジュアルアーツ専門学校卒の30歳で、これが長編デビュー作です。
ミャンマーでのロケ撮影では検閲が厳しく、いろいろ困難を強いられたそうですが、堂々たる作品に仕上がっていました。
この映画のプロデューサーを務める吉田文人さんは、ぼくの母校(大阪大学)の経済学部出身で、先輩に当たります。
面識はなかったのですが、ひょんなことから吉田さんとご縁ができ、「阪大つながりで、ぜひ観てください!!」と熱いラブコールを寄せられ、昨夜、シネ・リーブル梅田に駆けつけた次第です。
昨年の東京国際映画祭では「アジアの未来部門」で受賞しており、海外でも評価が高いと聞いています。
一般公開されんことを切に願っています。