庶民の哀歓を情感込めて描いてきたアキ・カウリスマキ監督。
このフィンランドの名匠が難民問題で揺れ動く欧州の現状にメスを入れた。
といっても社会派映画ではない。
希望の光を当てる珠玉の人間ドラマだ。
シリア難民の青年カーリド(シェルワン・ハジ)が貨物船にもぐり込んで首都ヘルシンキにやって来る。
石炭の山から煤まみれになって現れる冒頭が物語の行く末を暗示する。
両親を空爆で亡くし、生き別れた妹との再会をひたすら願う。
未知の世界で彷徨う子羊のような存在だが、根はたくましい。
そんな主人公に手を差し伸べるのが中年男のヴィクストロム(サカリ・クオスマネン)。
酒浸りの妻と別れ、衣服の行商からレストラン経営者に転身していた。
不法滞在者と人生のリセットを図る男。
一度、殴り合ってから青年をレストランに雇い入れる唐突な展開が妙におかしい。
店を寿司屋に変え、大失敗をやらかす場面は爆笑モノだった。
カウリスマキ監督はどこまでも2人に寄り添い、優しい眼差しを注ぐ。
カーリドがロマの物乞いにお金を恵むシーンはとりわけ秀逸。
セリフを極力削ぎ落とした、いつもの静謐な映像がいっそう冴えわたる。
ただ、本作はやや様相が異なる。
収容施設の様子や難民を襲う極右青年など、これまで触れていなかった厳しい現実を容赦なく突きつけていたから。
押し寄せる難民に対し、欧州では二者択一が迫られている。
紛争の犠牲者として受け入れるか、それとも自国の生活や文化を脅かすよそ者として排除するか。
社会的弱者である難民の人間性と人権が失われている状況に監督は深い憂慮と危惧を抱く。
今こそ寛容さが必要。
全編、そのメッセージが込められていた。
ラストで見せた青年の笑顔が素晴らしい。
希望を持てる年になりますように。
1時間38分
★★★★(見逃せない)
☆1月6日(土)~シネ・リーブル梅田、20日(土)~京都シネマ、27日(土)~元町映画館
日本経済新聞夕刊に2018年1月5日に掲載。許可のない転載は禁じます)
清水谷高校12回生です 千葉県柏市在住
先日 裕章裕章さんと飲んだらBowmore17yoのでている映画があるとのことでいっしょうけんめいPCで調べましたが見つけることができませんでした
よほど武部さんに尋ねようとしたところ小出さんから写真を送ってくれました
そのとき僕の友人から武部さん映画とウィスキーのブログも送ってくれました
ウィスキーはアイリッシュが武部さんとの出会いです
三浦さん コメント、ありがとうございます。
母校の大先輩ですね。
大昔に上梓した『ウイスキーはアイリッシュ』からですか。光栄です(笑)
『ウイスキー アンド シネマ 』の1と2、共によく読まれているようで、著者としてうれしいです。
よろしくお願いします。
おけらと申します。三浦さんと同じように商社に働いていた関係で、同じようにお酒が好きになりましたが、三浦さんと同じようにウイスキーを飲むようになったのは、三浦さんと遊ぶようになってからです。おけらと名乗ると、男性と間違えてか「いやらしメール」が舞い込みますが、違います。女性です。(本人はそう思っているが、他者はどうか?)私も映画大好きです。きちんと新宿武蔵野館で「ウイスキーと二人の花嫁」を時間通りに予定の場所で見ることができた三浦さんの友達とは、何を隠そう、私・おけらです。
鑑賞直後に、どこかで見ていたはずの三浦さんを探したのですが、探せず。直後にみんなと合流して「飲む!」(もち、ウイスキー!)予定だったので、「良かったですねえ、映画!」と言うと「・・・・。観なかった。」
えっと驚く私に、会場は間違えなかったけれど、チケットもちゃんと買ったけれど、始まった映画は予告編だと思っていたがなかなか終わらず、結局それは本編だったとわかった時にはすでに遅し。隣の上映室「巫女さんとなんとか」という映画だったらしく・・」とヘドモド。全く同じ経験が過去にある私は、もう可笑しくて可笑しくて、気の毒で、ますます三浦さんが大好きになりました。人生、思いがけないことで世界が広がる世界もあります。私が部屋を間違えたと悟り、諦めて最後までみた映画は絶対自分では選ばない「SF・近未来映画」。これが、それなりに考えさせられる映画だったので、得した気分ではありました。三浦さんはどうも、そうではなかったらしい。大先輩はとってもお茶目。ウイスキー伝道師人間、映画とお酒大好き人間たちを産んだ高校は、たいへん豊かな情操教育をされているようで、近隣のみなさんに宣伝しておきましょう。おっと、全く友人が住んでいないのだ~。このブログ、ご覧のみなさん、どうぞよろしく~。
おけらさん、コメントありがとうございます。三浦さんとの関わり、オモロイですね。
これからもお酒と映画を満喫してください~(^_-)-☆