武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

わが子への母親の切なる想い~『あなたを抱きしめる日まで』

投稿日:2014年3月14日 更新日:

©2014『あなたを抱きしめる日まで』製作委員会

この映画、ぐんぐん引き込ませるパワーがあります。

 

大好きな作品です~(^O^)/

 

☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆

 

生き別れた息子にひと目会いたい。

 

母親の切なる気持ちと愛情を凝縮させたロードムービー。

 

非道な養子縁組という社会問題をあぶり出しながら、シリアスな面を巧みにそぎ落とし、心温まる人間ドラマに仕上がっている。

 

実話の映画化。

 

主人公はロンドンで暮らす初老のアイルランド人女性フィロミナ(ジョディ・デンチ)。

 

ロマンス小説好きの平凡な主婦だが、彼女には大きな秘密があった。

 

10代だった50年前、郷里で男の子を産んでいたのである。

 

親から勘当され、修道院で働かされる。

 

そしてわが子が3歳の時、米国人夫婦に養子に引き取られた。

 

門扉にすがりつき、愛児の名を叫び続ける別離のシーンは泣かせる。

 

息子を捜すべく協力を求めたのが元ジャーナリストのマーティン(スティーヴ・クーガン)。

 

政府の広報マンをクビになったばかりで、この件を記事にして再起を図ろうとする野心家だ。

 

人はいいのだが……。

 

全く別世界に生きる2人が行動を共にするや、物語が軽やかに動き出す。

 

少しずつ距離感が狭まり、いつしか疑似母子のような間柄に。

 

心がくすぐられる。

 

フィロミナの過去に迫るにつれ、修道院の欺瞞性が明るみになる。

 

シスターたちの振る舞いが何とも不気味。

 

その実態は英・アイルランド合作映画『マグダレンの祈り』(2002年)で克明に描かれたが、ここでは糾弾はするものの、あえて“深追い”しない。

 

それよりも渡米後、息子に接近していく過程に重点が置かれる。

 

犯罪者や麻薬依存症になってはいまいか。 再会を恐れる母心がミステリー小説の謎解きのごときムードを生み出す。

 

よどみのない展開と馥郁とした映像。

 

英国映画界の重鎮スティーヴン・フリアーズ監督の安定した演出に酔わされる。

 

キーポイントは黒ビールのギネス。

 

お見逃しなく! 

 

1時間38分

 

★★★★(見逃せない)

 

☆15日から大阪ステーションシネマほかで公開

 

(日本経済新聞2014年3月14日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。