この映画、ぐんぐん引き込ませるパワーがあります。
大好きな作品です~(^O^)/
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生き別れた息子にひと目会いたい。
母親の切なる気持ちと愛情を凝縮させたロードムービー。
非道な養子縁組という社会問題をあぶり出しながら、シリアスな面を巧みにそぎ落とし、心温まる人間ドラマに仕上がっている。
実話の映画化。
主人公はロンドンで暮らす初老のアイルランド人女性フィロミナ(ジョディ・デンチ)。
ロマンス小説好きの平凡な主婦だが、彼女には大きな秘密があった。
10代だった50年前、郷里で男の子を産んでいたのである。
親から勘当され、修道院で働かされる。
そしてわが子が3歳の時、米国人夫婦に養子に引き取られた。
門扉にすがりつき、愛児の名を叫び続ける別離のシーンは泣かせる。
息子を捜すべく協力を求めたのが元ジャーナリストのマーティン(スティーヴ・クーガン)。
政府の広報マンをクビになったばかりで、この件を記事にして再起を図ろうとする野心家だ。
人はいいのだが……。
全く別世界に生きる2人が行動を共にするや、物語が軽やかに動き出す。
少しずつ距離感が狭まり、いつしか疑似母子のような間柄に。
心がくすぐられる。
フィロミナの過去に迫るにつれ、修道院の欺瞞性が明るみになる。
シスターたちの振る舞いが何とも不気味。
その実態は英・アイルランド合作映画『マグダレンの祈り』(2002年)で克明に描かれたが、ここでは糾弾はするものの、あえて“深追い”しない。
それよりも渡米後、息子に接近していく過程に重点が置かれる。
犯罪者や麻薬依存症になってはいまいか。 再会を恐れる母心がミステリー小説の謎解きのごときムードを生み出す。
よどみのない展開と馥郁とした映像。
英国映画界の重鎮スティーヴン・フリアーズ監督の安定した演出に酔わされる。
キーポイントは黒ビールのギネス。
お見逃しなく!
1時間38分
★★★★(見逃せない)
☆15日から大阪ステーションシネマほかで公開
(日本経済新聞2014年3月14日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)