前説は不要です。
以下の拙文を読んでください~(^o^)v
☆ ☆ ☆ ☆
限りなくドキュメンタリーに近いフィクション。
ある一家を独特な手法で5年にわたって追い求めた。
毎日の積み重ねが人生そのもの。
その尊さを英国映画界の名匠マイケル・ウィンターボトム監督が優しい眼差しを通して謳い上げる。
薄暗い未明、若い母親が幼い子たちを連れ、バスと電車を乗り継いで夫のいる所へ向かう。
何とそこが刑務所!
服役中の夫との貴重な面会時間なのだ。
冒頭から意表を突く展開。
そのうち母親が昼夜、働きながら、3~8歳の4人のわが子を1人で育てている実状がわかってくる。
厳しい暮らしぶり。
家がのどかな田園地帯にあるだけに、よけいに際立つ。
この一家にカメラが容赦なく肉迫し、家族1人1人の素顔が浮かび上がる。
全く飾り気がない。
密着取材による記録映画かと見まがうほどリアルな生活臭が伝わってくる。
妻(シャーリー・ヘンダーソン)と夫(ジョン・ジム)はプロの俳優が演じている。
実は子どもたちはズブの素人で、本作のため監督に見出された。
しかも彼らは実の兄弟なのである。たまにしか会えない父親に甘えたり、きつく当たる母親に反抗したり。
疑似両親とはいえ、みな等身大の自分をさらけ出す。
演技しているのか素なのか、その区別がつかない。
親に対する距離感や考え方が歳月と共に変化する。
それは成長の記録だ。
平凡な日々の繰り返しなのに、4人は確実にたくましくなっている。
そこが映画の1つの核心部といえる。
もう1つの重要なテーマは普遍的な家族愛。
父親が犯罪者であれ、決して揺るがない。
慈愛に満ちた空気がほんに心地良い。
それが監督の狙いなのだろう。
そして気がつくと、この家族と一体化している自分に気づく。
小品ながらも、パワーのある映画だった。
1時間30分
★★★★(見逃せない)
☆関西では9日からテアトル梅田、シネ・リーブル神戸、順次京都シネマ にて公開。
(日本経済新聞2013年11月1日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)