Ⓒ2010「雷桜」製作委員会
日本の女優で気になるのが蒼井優です。
演技へののめり込み度が高く、ますます巧くなっていくのではと期待できるから。
時代劇の『雷桜』で、彼女がイケメン俳優の岡田将生と共演しています。
日経新聞に載ったぼくの原稿をどうぞ。
ちと辛口ですが……。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
愛し合う2人にいかなる障壁が立ちはだかるのか。
そこが恋愛ドラマの見せどころだと思う。
歴然とした身分の違いを乗り越え、愛を貫く恋人たちのいじらしいまでのピュアな気持ち。
それをメルヘン風に綴った時代劇ロマンスだ。
将軍家に生まれた青年、斉道(岡田将生)と山で育った娘、雷(蒼井優)との恋物語である。
現実的に考えると、どんな結末になるのかが容易に予測できる。
王女と新聞記者との淡い恋模様を描いた名作「ローマの休日」(1953年)しかり。
これも悲恋の過程を見せる作品と思って観てほしい。
斉道は繊細な心の持ち主で、かなり情緒が不安定。
幼少時に母親が将軍の父に捨てられ、乱気の末に死んだことがトラウマになっている。
一方、雷は庄屋の娘として生まれたが、藩の抗争に巻き込まれ、生後間もなく隣の藩の武士、理右衛門(時任三郎)に誘拐され、山奥で育てられる。
その事情を知らない彼女は男勝りの自由奔放な娘になった。
1人で山に入った斉道が雷と出会い、2人は反発しながらも惹かれ合う。
絶対にあり得ない展開だが、寓話と思えば納得できよう。
落雷で真っ二つに折れた銀杏に桜が芽をつけた巨木が、彼らの結びつきの象徴だ。
それを廣木隆一監督はファンタジー色で彩り、人工美を際立たせたが、やや違和感を覚える。
もう少し押さえてほしかった。
初恋の人が遠い別世界にいることを自然人の雷は認識できない。
それを不憫に思う斉道。
どこまでも真っ直ぐな愛情。
観ていてたじろいでしまうほど。
2人を知る斉道の家臣で雷の兄、助次郎(小出恵介)の沈静な態度が印象に残る。
小説と違って、映画では最後まで説明する必要はなかったのではないか。
もっとシャープに短く描けたはず。
そういう物語だと思う。
2時間13分。
★★(それなりに楽しめる)
☆全国東宝系公開中
(日本経済新聞2010年10月20日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)
蒼井優ちゃんが熱演! 恋愛時代劇~『雷桜』
投稿日:2010年10月25日 更新日:
執筆者:admin