武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画の地を訪ねて(6)英セント・アンドリューズ~『炎のランナー』

投稿日:2011年10月9日 更新日:

秋はスポーツの季節ですね。
今日も爽やかな好天。
午後から20キロほど走ってこようと思っています。
ランニングと言えば、『炎のランナー』という素敵なイギリス映画がありましたね。
そのロケ地になった英・スコットランドのセント・アンドリューズを昨年夏に訪れました。
そのルポです。
     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆
画像セントアンドリューズ(1)
白い短パン姿の若者たちが広々とした砂浜の波打ち際を疾駆する。
躍動感あふれるヴァンゲリスのサウンドをかぶせ、その爽やかな情景をスローモーションで捉えた英国映画『炎のランナー』(1981年)の冒頭シーンが忘れられない。
1924年のパリ五輪で陸上競技100㍍と400㍍を制した2人の英国人選手の生きざまを描いた青春グラフィティー。
その合宿の場面である。
撮影地は英国スコットランド東部のセント・アンドリューズ。
ぼくは今夏(2010年)、ケルト文化を探る旅の途中で立ち寄った。
セント・アンドリューズと言えば、ゴルフの発祥地。
世界最大のゴルフ・トーナメント全英オープンの開催地としても知られる。
ぼくが訪れた7月19日は大会(139回目)閉幕の翌日とあって、まさに祭りの後の静けさが漂っていた。
町の北側、ロケ地のウエスト・サンド・ビーチを散策した。
厚い雨雲に覆われ、北海から冷たい潮風が吹きつける。
寒い。
とても真夏とは思えない。
そんな中、砂浜をジョギングする人たちを眺めていると、映画の主人公が瞼にちらついた。
ケンブリッジ大学の陸上部員で、闘争心むき出しのユダヤ系青年ハロルド(ベン・クロス)と、宣教師になると決め、神にわが身を託すスコットランド人青年エリック(イアン・チャールソン)。
全く対照的な2人が檜舞台の100㍍で対決するはずだったが、予選が日曜(安息日)と重なり、エリックは神の掟にそむくと出場を辞退する。
同じ英国人選手といえども、気質の違いをまざまざと見せつけ、ひと括りにできない国情を改めて実感させられた。
英国は連合王国なのだ。
イングランド人になりたいと切望するユダヤ人の哀しみがとりわけ心に深く染み渡った。
『炎のランナー』は走ることを通じて、人間賛歌を高らかに謳い上げた名作だった。
そう思いつつ、浜辺を後にすると、そこはゴルフ場だった。
それも「ゴルフの聖地」と呼ばれるオールド・コース。
前日まで石川遼君がここでプレーしていたのだ。
画像セントアンドリューズ(2)
サクは撤去されており、自由に入れる。
買い物帰りの主婦が平然とグリーンを横切っている。
「すみません、どいてくれませんか」
どこからともなく日本語が聞こえてきた。
気がつくと、ぼくはコースのど真ん中にいた。
画像セントアンドリューズ[2]
声の主は日本人ゴルファー。
あわてて駆け抜けた。
そう言えば、映画の陸上選手たちもオールド・コースの中を軽快に走っていたなぁ。
にわかに気持ちが高揚した。
(読売新聞2010年11月9日朝刊『わいず倶楽部』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。