いやぁ~、かなりの拾いモノでした~!
前回、ご紹介した日本映画『奇跡』とは全く異なったテイストですが、見応え十分。
あまりの面白さに、試写で見終わったあと、ちょっと興奮してコーヒーを3杯も立て続けに飲んでしまった(☆_☆)
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
(C) CINEMANX FILMS TWO LIMITED 2009
登場人物が3人だけ。
しかも密室という閉ざされた空間。
そこで繰り広げられる粘っこい犯罪ドラマを、息をもつかせぬ展開で、一気に見せ切った。
舞台劇ならまだしも、映像で料理したところが凄い。
非常に刺激的なイギリス映画だ。
冒頭の10分間で心をわしづかみにされた。
白昼堂々、覆面をした2人組が若い女性を拉致し、アパートの一室に監禁、ベッドに縛り付ける。
完璧なまでの周到さ。
あまりの手際良さに呆然とさせられる。
一切言葉を発しないだけに、よけいにインパクトが強い。
犯人は刑務所で出会った中年男のヴィック(エディ・マーサン)とイケメン青年のダニー(マーティン・コムストン)。
人質の女性アリス(ジェマ・アータートン)は富豪の娘で、2人は彼女の父親に身代金を要求する。
(C) CINEMANX FILMS TWO LIMITED 2009
ここまではごく普通の誘拐事件だが、ダニーがアリスに素顔を見られたことから激変する。
あっと驚く人間関係が浮き彫りにされ、3人3様、本性をむき出しにするのだ。
同時に各人のキャラクターが絡み合い、加害者と被害者という構図では説明がつかなくなる。
逃げたい一心であれこれと画策するアリス。
ズケズケと命令する几帳面なヴィックに反発する小心者のダニー。
騙し合い、疑心暗鬼、したたかさ、絶望、恐怖……。
ありとあらゆる感情と言動が室内にうごめく。
状況が刻々と変わる中、やがてカオス状態へと陥り、気がつくと、濃厚な心理劇に変質しているといった具合。
本作で長編デビューしたJ・ブレイクソン監督は容赦なく至近距離から3人に迫り、秩序の乱れをシャープに描き上げる。
監督が手がけた脚本も秀逸だ。
当然、どんでん返しが用意されており、最後まで気が抜けない。
イギリス映画界は稀有な才能を得た。
1時間41分
★★★★
☆大阪ではシネ・リーブル梅田で公開中
(日本経済新聞2011年6月17日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)
このイギリス映画、見応えあり~『アリス・クリードの失踪』
投稿日:2011年6月20日 更新日:
執筆者:admin