武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

合作による秀逸な群像ドラマ『ニューヨーク,アイラブユー』~

投稿日:2010年3月6日 更新日:

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ニューヨークで日々、繰り広げられる出会いとそこから芽生える愛。その多彩な姿を11人の監督が合作で紡ぎ出した。
『鬼が来た!』(2000年)のチアン・ウェン(中国)、『エリザベス』(1998年)のシェカール・カプール(インド)、本作にも出演している女優ナタリー・ポートマン(米国)ら世界6か国から監督が集った。
ニューヨーカーではなく、むしろ“よそ者”の視点でこの大都会を映像に焼きつけている。
11話から成る。各エピソードの関連性はないが、街と人を撮り続ける女性ビデオアーティスト(エミリー・オハナ)の動きを話の継ぎ目に挿入し、時々、登場人物と彼女を接触させることでよどみのない流れを生んだ。
この部分はランディ・バルスマイヤー監督(米国)が担当した。
作家性を重視する監督が多いのに、全ての物語が寄り添うと、調和のとれたアンサンブルのように変身する。
不協和音は全く聞こえず、非常に統一感のある群像ドラマに仕上っている。
ぼくはてっきり1人の監督が撮ったものとばかり思っていた。
オムニバスではない合作。面白い試みだ。
日本からは岩井俊二監督が参加した。
アニメ映画の作曲家の青年(オーランド・ブルーム)と、彼に次々と指示を与える監督助手の女性(クリスティーナ・リッチ)との物語。
互いに顔を知らない2人のもどかしい関係が、現実に出会った瞬間、大きなときめきへと昇華する展開が実に見事だ。
文豪ドストエフスキーの小説を“触媒”に使ったところもニクい。
刹那的な愛、追憶の愛、円熟した愛、儚い愛、確かめ合う愛……。
シリアスで切ない物語もあるけれど、いろんな愛の形をどこまでも詩的な映像で見せ切った。
くどい説明はない。
それが余韻の深さにつながった。
1間43分
★★★★(見逃せない)
梅田ガーデンシネマ、シネマート心斎橋、TOHOシネマズ西宮、京都シネマで公開中
(日本経済新聞2010年3月5日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。