大阪のアウトロー映画。
昨年夏公開の『後妻業の女』に続き、原作が大阪在住の作家、黒川博行の小説。
金に目がくらんだ人間模様といい、毒気のある作風といい、両作のテイストはよく似ている。
こちらはコミカルな活劇娯楽作として観させる。
うだつの上がらない建設コンサルタント業の二宮と激情的なヤクザの桑原。
関ジャニ∞の横山裕と佐々木蔵之介が扮する対照的な2人のやり取りが、品がないとはいえ、とにかく面白い。
大阪弁による丁々発止の会話の応酬。
何ともリズミカルで、自然とボケとツッコミが生まれ、まるで漫才のよう。
俳優の波長が合っているのもよくわかる。
この2人が映画プロデューサー小清水の映画製作話に乗り、出資金を騙し取られる。
その金を奪取すべく、大阪からマカオへ、そして大阪に戻り、一気呵成に結末へと転がり込む。
小清水役の橋爪功の存在感を際立つ。
この人、映画やテレビドラマでは標準語を話す役柄が多いが、根は大阪人。
「べっちょおまへん(別状ない)」とひと昔前の大阪弁をアドリブで使っていた辺りはさすが。
違和感なく映画を観られたのは、ほぼ関西出身の俳優で固めたから。
神戸出身の北川景子が本物の大阪弁を習得するため大阪弁の会話テープを聴いていたという。
これぞプロ根性!
小林聖太郎監督も大阪出身だけに、ちょっとした仕草や会話の中に大阪人らしい庶民性を絶妙にかもし出していた。
安定感のある演出を見せ、今や中堅監督の域に達した感がする。
全編、大阪色がことさら強調され、映像が火照っていた。
現実にはこんな濃密な大阪は存在しない。
劇画風味とはいえ、もう少しクールさがほしかった。
それにしても裏社会の人間がうごめく大阪の映画の何と多いこと。
格好の場所ということか…………。
だからこそ、大阪を舞台にした滋味深い文芸映画をこれから期待したい。
2時間
★★★(見応えあり)
☆28日から大阪ステーションシティシネマほかで公開
(日本経済新聞夕刊に2017年1月27日に掲載。許可のない転載は禁じます)