かつて味わったことのない小説を読みました。
スペインの女性作家、ロサ・モンテーロの『世界を救うための教訓』(彩流社)。
訳者の阿部孝次さんから謹呈されました。
ありがとうございます!
阿部さんは大阪生まれで、古巣新聞社東京本社の元記者。昨年、定年退職されました。
いつの頃からかご縁ができ、お互い本を上梓するたびに謹呈し合っています。
スペイン語が堪能で、これまでに何冊も訳本を出しておられます。
で、この本ですが、何よりも題名に惹かれました。
道徳っぽい内容かなと思いきや、首都マドリッドのいかがわしい地区を舞台にした、ダークな社会性に社会性に富んだヒューマンドラマでした。
妻をガンで亡くした中年タクシー運転手、その妻を診断したコンピューターゲーム中毒の医師、内戦から逃れ売春婦をしているアフリカの娘、アルコールにのめり込む元大学教授のインテリ女性……。
復讐劇を軸にして、彼らの生きざまがじわじわとあぶり出されていきます。
おどろおどろしいほど、すべて本音の世界……。
陰鬱な世界観で、やたら形容詞が多い独特な文体に当初、戸惑いましたが、そのうち妙に惹かれていきました。
難解であろう原文を、格調高い日本語に訳された阿部さんの力量に脱帽~!
忘れ難い小説と出会えました。