この写真のボトルを見て、どんなウイスキーなのかピンときた人はかなりの洋酒通だと思います。
アイリッシュ・ウイスキーのオールド・コンバー(OLD COMBER)といいます。1953年に蒸留所が閉鎖され、いまや入手するのが非常に困難なレアな代物です。
蒸留所はイギリス領北アイルランドのコンバーの町にありました。北アイルランドであれ、南のアイルランド共和国であれ、アイルランド島で造られたウイスキーはみなアイリッシュ・ウイスキーです。お酒には国境なんてないんですね。
14年前、アイルランドの片田舎の酒屋さんで購入しました。店の棚の隅に埃まみれになっているボトルを発見し、「ワ~ッ!!」と絶叫! アイルランドにいることをすっかり忘れ、「ちょうだい、ちょうだい、ぼくのん!」と日本語でまくしたて、手を震わせながらお金を支払ったのを鮮明に覚えています。
たしか日本円で2500円ほどでした。多分、値打ちがわからなかったのでしょう。その20倍出しても、OKという人がいると思いますが……。
このボトル、空っぽです。飲んじゃいました~! 昨年の春、自宅で宴会を開いたとき、酔った勢いと心地よい雰囲気に呑まれ、「これ、めちゃ珍しいウイスキーやねん。空けるで~!!」とみんなで味わったんです。
熟成が30年以上も経っているお年寄りのウイスキーなので、枯れた味わいとでも言いましょうか、樽(リグニン)の風味が妙に強かったです。期待したほどではなかった……。
数年前のぼくなら考えられなかったことです。なにしろいっぱしのウイスキー・コレクターでしたから。もったいなくて、そんな大それたことできるわけがありません。封を切るなんてバチが当たるとさえ思っていました。
「日本でオールド・コンバーを持っているのは、ひょっとしてぼくだけかも?」なんて自己満足に浸って、せっせとボトルを磨いていたな~。他にもレアなウイスキーをいろいろ抱えていまして、眺めるだけで眼をトローンとさせていました。
でもねぇ~、お酒は飾っていてもしゃ~ない、飲む人を心地よくするために造られたモノなんやと思うようになって。もし交通事故などで突然、あの世に逝ったら、味もわからぬままそのウイスキーとの縁が切れてしまうんですからね。
あのときオールド・コンバーの価値を知っている人はいなかった。でもめちゃめちゃ楽しい飲み会でした。それでええやんと思ってます。翌朝も、「あ~、なんで飲んでしもうたんやろ」と後悔することもなく。
そうは言っても、正直、未練があり、いまだボトルを捨てきれないでいます。これも煩悩かな。
お酒は飲んでなんぼのモン~!?
投稿日:2009年1月28日 更新日:
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