ぼくの知人に髙川邦子さんという方がいてはります。
拙著『大阪「映画」事始め』(彩流社、2016年)で取り上げた荒木和一さんのひ孫さんで、その絡みでご縁ができました。
荒木さんはスクリーン投影式映画を初めて日本に持ち込み、上映したとされる人物です。
髙川さんは、激動の昭和期に関心を持っておられ、6年前、『ハンガリー公使 大久保利隆が見た三国同盟ある外交官の戦時秘話』(芙蓉書房出版)を出してはります。
大久保利隆という御仁は高川さんのお爺さんです!
そしてこの度、2冊目の著書『アウトサイダーたちの太平洋戦争 知られざる戦時下軽井沢の外国人』(芙蓉書房出版)を刊行されました。
おめでとうございます!
1冊、謹呈してくれはりまして、さっそくページを繰りました。
ぼくの興味ある分野とあって、一気に読破!
戦時中、長野県軽井沢に集められた外国人(アウトサイダー)の暮らしぶり、生き方、顚末などが濃密にまとめられています。
戦時中、一般的の日本人については両親や祖母からの伝聞をはじめ、その他いろんな書物、映画などによってある程度は知っていました。
アメリカやイギリス、英連邦諸国で抑留された日系人の話はよく知られていますね。
しかし日本における外国人となると、ほとんど未知の領域でした。
今や避暑地として知られる軽井沢にかくも多くの外国人が暮らしていたとは吃驚しました。
それもドイツ人(ユダヤ系も含めて)がメジャーだったんですね。
日本で生活していてもゲシュタボの監視下に置かれ、やむなくナチスに賛同せざるを得なかった人の心情がよくわかりました。
ポーランドでホロコーストを実践したSS(親衛隊)将校のヨーゼフ・マイジンガーが河口湖にいたとは、これまた驚きでした。
ほんの腰かけ程度に滞在するつもりが、戦争によって長期間、日本暮らしを余儀なくされた人も少なくなかったんですね。
そんな歴史に翻弄される姿が、第6章「家族の物語」に象徴されていました。
これは人生ドラマです!
戦前から厳しい戦時中、そしてアメリカ軍が進駐してきた戦後にかけての激動期、アウトサイダーたちの日常の暮らしぶりはもちろんのこと、体温、吐息まで存分に伝わってきました。
こうした軽井沢の外国人にターゲットを絞ったことで、太平洋戦争のひとつの裏面史を見事に浮き彫りにしています。
随所に盛り込まれた外国人や現地日本人の証言が非常に興味深かったです。
こういう「生の声」や「本音」が本書の核心とも思えました。
膨大な資料(史料)、評伝、研究論文などを読み解き、さらに聞き取り調査も徹底しており、これぞ労作といった一冊!
ぼくは新聞記者をやっていたので、そのご苦労がよくわかります。
命(体重!?)を削って取り組みはったのが行間からビンビン伝わってきました。
戦時中、軽井沢に疎開したお父さんとの会話のやり取りから、本書の執筆を思い立ったという動機がしびれます(笑)。
そして外交官のおじいさん(大久保利隆)に迫った前著があったからこそ、この本が誕生したといっても過言ではありません。
その意味で、親孝行、お爺さん孝行をしはりました。
というわけで、読みごたえのあるおススメの1冊です!
「排外主義はよくない!」
それが髙川さんの伝えたかったことです。
前著『ハンガリー公使 大久保利隆が見た三国同盟 ある外交官の戦時秘話』はこの本です。