武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

こだわりの映像~本格時代劇『散り椿』

投稿日:

作家、葉室麟の同名小説を映画化した本格時代劇。

主人公の凛とした生き方に胸が衝かれる。

カメラマン木村大作の監督第3作目。

ストイックなこだわりの映像が際立つ。

©2018「散り椿」製作委員会

葉室原作の『蜩ノ記』(2014年)でメガホンを取った小泉尭史が脚本を担当し、準主役の岡田准一が本作で主演を張った。

冒頭、雪中での立ち回りシーンに目が釘付けになった。

瓜生新兵衛(岡田)が刺客を次々と斬りつける。

ただならぬ緊迫感と静謐な佇まい。

それが本作の通底をなしていた。

江戸中期の物語。

18年前、藩の不正事件に端を発し、田舎に身を潜めていた新兵衛が病に伏す妻、篠(麻生久美子)から最期の願いを聞き、藩へ舞い戻る。

そこから不協和音が……。

軸となるのはかつての道場仲間で、今や側用人の榊原采女(西島秀俊)との確執。

篠をめぐる三角関係が最後まで尾を引き、観る者の心をざわつかせる。

©2018「散り椿」製作委員会

新兵衛の義弟、坂下藤吾(池松壮亮)と義妹、里美(黒木華)の存在が本筋を絶妙に支える。

原作では、2人は甥と旧友の妻だが、あえて設定を変え、主人公との適度な距離感を出した。

城代家老の石田玄蕃(奥田瑛二)がこれみよがしに悪役に徹し、勧善懲悪の世界へと引きずり込む。

この手の映画はやはりこうでないと収まらない。

富山、長野、滋賀……。

全編、ロケ撮影を貫いた。

カメラは奇をてらわず、真正面から登場人物を狙う。

ワンシーンにかなり時間をかけているのがわかる。

ただトーンの異なる映像が目につき、それが気になった。

不正の真相とは何か。

セリフを極度に抑えた演出でサスペンス色を添え、メリハリをつけた。

テンポをもう少し速めてもよかったかもしれない。

愛する人のために命をかける男に扮した岡田准一。

時代劇の顔が様になってきた。

1時間52分 

★★★(見応えあり)

☆28日から全国東宝系にて全国ロードショー

(日本経済新聞夕刊に2018年9月28日に掲載。許可のない転載は禁じます)

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プロフィール

プロフィール
武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。