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12月 16

一種、奇抜なアウトロー映画~『MR.LONG/ミスター・ロン』

殺し屋が出てくる映画は多々あれど、本作のように異国の地で疑似家族を作るケースは珍しい。

しかも逃亡劇。

想定外のシチュエーションと奇抜な登場人物が独特なアウトロー映画を生み出した。

Ⓒ2017 LiVEMAX FILM / HIGH BROW CINEMA

監督のSABUは脚本も自身で手がけ、とことんオリジナルにこだわる。

作家性の強い人だけに、難解な作品と思われがちだが、どれも娯楽性に富んでいる。

この映画もしかり。

ロンはナイフを自在に操る、謎めいた孤高の殺し屋。

アジアを代表する台湾人俳優チャン・チェンが何ともニヒルに演じ切る。

この男が東京で台湾マフィアのボスの暗殺に失敗し、北関東の田舎へ逃亡する。

流れ着いたのがうら寂れ、見捨てられた町。

そこで8歳の少年と覚せい剤に溺れる台湾人の母親(イレブン・ヤオ)と出会う。

Ⓒ2017 LiVEMAX FILM / HIGH BROW CINEMA

さらに世話好きな住人たちが絡んでくる。

フィルム・ノワール(犯罪映画)から一転、のどかな世界へ。

何という展開なのだ! 

こういう流れがこの監督の真骨頂である。

料理が得意なロンは知らぬ間に牛肉麺(ニュウロウミェン)の屋台を出すハメになる。

もう喜劇としか言いようがない。

面白い。

少年との交流から母親を巻き込み、家族のようになっていく。

実にほほ笑ましい。

スピード感のある演出が売りなのに、ここではいたってスローペースだ。

Ⓒ2017 LiVEMAX FILM / HIGH BROW CINEMA

チャン・チェンは終始、クール。

日本語を話せない役どころなので、セリフがほとんどない。

表情と仕草だけの演技がかえってシブさをかもし出していた。

このまま終わるはずがない。

いつ平穏な生活が破綻するのか。

それがある種の緊張感を生む。

そしてあっと驚く壮絶なクライマックスを迎えるのだ。

もう少しメリハリが欲しかった。

とはいえ、「シンプル・イズ・ベスト」を実感させる濃い映画だった。

2時間9分

★★★★(見逃せない)

☆16日から大阪・シネマート心斎橋ほか全国順次公開

(日本経済新聞夕刊に2017年12月15日に掲載。許可のない転載は禁じます)

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