この映画はとにかく観てほしいです。
参りました!!
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音楽は格闘技!
そう思わしめる鮮烈な映画だった。
極限の師弟関係を実にスリリングな映像で見せ切った。
弱冠28歳(製作当時)のデイミアン・チャゼル監督。
その才気あふれる演出に打ちのめされた。
クラシックならぬ、ジャズのドラムという設定が面白い。
全身を使う打楽器だからこそ、視覚的に映えるのだろう。
脚本も監督が実体験を基にして書かれた。
名門音楽院でドラムを専攻する19歳のニーマンが、優れたミュージシャンを輩出してきた伝説の教師フレッチャーの選抜クラスにスカウトされる。
鼻高々で意気揚々としたのは最初だけ。
後は2人のバトルに。
この教師は恐怖でクラスを支配する。しかも異常なまでの完璧主義者。
0.1秒のテンポのズレも許さない。
ミスをすると、罵詈雑言を浴びせ、体罰も与える。
超スパルタ式のレッスンにニーマンがどこまで耐えられるのか、そこに焦点が当てられる。
精神的に追い込まれていく姿が憐れだ。
天才を育成せんがための指導と思いたい。
が、加虐趣味を伴ったパワーハラスメントの様相を見せ、不気味さをかもし出す。
目標達成のためには、容赦なく「邪魔者」を捨てる非情さが両者に共通している。
ある意味、似た者同士による2人劇ともいえよう。
鬼教師に扮したJ・K・シモンズが化け物のごとく恐ろしい存在感を放つ。
まさに怪演。
教え子役のマイルズ・テラーもプロはだしのドラム演奏を披露した。
クライマックスの独奏は驚異的としか言いようがない。
クローズアップを多用し、2人の表情を事細かに描写。さらに全シーンにニーマンを登場させる。
こうした緻密な演出が映像に凄まじい緊迫感を漲らせた。
わずか19日間で撮ったとは思えないほど濃厚な仕上がり。
観終わった後、得も言われぬ心地よい疲労感に包まれた。
傑出した1本。
1時間47分
★★★★★(今年有数の傑作)
☆TOHOシネマズ梅田ほかで公開中
(日本経済新聞2015年4月17日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)