武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

音楽はバトルだ~!! 『セッション』

投稿日:

この映画はとにかく観てほしいです。

 

参りました!!

 

☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆

© 2013 WHIPLASH, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

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音楽は格闘技!

 

そう思わしめる鮮烈な映画だった。

 

極限の師弟関係を実にスリリングな映像で見せ切った。

 

弱冠28歳(製作当時)のデイミアン・チャゼル監督。

 

その才気あふれる演出に打ちのめされた。

 

クラシックならぬ、ジャズのドラムという設定が面白い。

 

全身を使う打楽器だからこそ、視覚的に映えるのだろう。

 

脚本も監督が実体験を基にして書かれた。

 

名門音楽院でドラムを専攻する19歳のニーマンが、優れたミュージシャンを輩出してきた伝説の教師フレッチャーの選抜クラスにスカウトされる。

 

鼻高々で意気揚々としたのは最初だけ。

 

後は2人のバトルに。

 

この教師は恐怖でクラスを支配する。しかも異常なまでの完璧主義者。

 

0.1秒のテンポのズレも許さない。

 

ミスをすると、罵詈雑言を浴びせ、体罰も与える。

 

超スパルタ式のレッスンにニーマンがどこまで耐えられるのか、そこに焦点が当てられる。

 

精神的に追い込まれていく姿が憐れだ。

 

天才を育成せんがための指導と思いたい。

 

が、加虐趣味を伴ったパワーハラスメントの様相を見せ、不気味さをかもし出す。

 

目標達成のためには、容赦なく「邪魔者」を捨てる非情さが両者に共通している。

 

ある意味、似た者同士による2人劇ともいえよう。

 

鬼教師に扮したJ・K・シモンズが化け物のごとく恐ろしい存在感を放つ。

 

まさに怪演。

 

教え子役のマイルズ・テラーもプロはだしのドラム演奏を披露した。

 

クライマックスの独奏は驚異的としか言いようがない。

 

クローズアップを多用し、2人の表情を事細かに描写。さらに全シーンにニーマンを登場させる。

 

こうした緻密な演出が映像に凄まじい緊迫感を漲らせた。

 

わずか19日間で撮ったとは思えないほど濃厚な仕上がり。

 

観終わった後、得も言われぬ心地よい疲労感に包まれた。

 

傑出した1本。

 

1時間47分

 

★★★★★(今年有数の傑作)

 

☆TOHOシネマズ梅田ほかで公開中

 

(日本経済新聞2015年4月17日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)

 

 

 

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プロフィール

プロフィール
武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。