ティルティラパッリ駅のホームで待てど暮らせど、チェンナイ(マドラス)発の急行列車「MS GURUVAYUR号」がいっこうに来ません。
インドでは列車の遅れは当たり前みたい。
始発駅は定刻通りに発車するのに、途中から遅れまくる~(*_*)
こんなことなら、先ほど焦る必要はなかった……~(((^^;)
結局、40分遅れで到着。
売店の店員が言っていた通り、ぼくの立っているところに「BE1」の車両が停まりました。
ドンピシャです~!
車内に足を踏み入れてびっくり。
何とエアコン付の寝台車だったのです。
寝台車とは思わなかった。
何だか得した気分、ルンルン~♪♪
昼間走るのに、なんで寝台車~?
目的地のトリヴァンドラムには、定刻なら午後11時15分着になるので、寝台車両があっても不思議ではありません。
10時間の長い列車の旅なんです~(^-^)
「A/C」とは、エアコン車内のことだったんですね。
上下の二段寝台。
扉で仕切ったコンパートメントにはなっていません。
通路から丸見えです(笑)
その通路にも縦長に二段ベッドが設えられています。
この雰囲気、収容所みたいな感じですが(笑)、存外に快適です。
ぼくの「席」は車両のほぼ中央の上段ベッドでした。
下のベッドには中年のご夫婦が座っていました。
このお2人、チェンナイから郷里のナーガーコイルという街に帰るところ。
1人旅をしている異邦人のぼくにあれこれと気を配ってくれはりまして、ほんまにありがたかったです~(*^^*)
ベッドで横になって本を読んだり、日記をつけたり、ボケッーっとしたり。
時々、下段に降りて、夫婦と語り合ったり。
ええ塩梅です~(^-^)
夕食は駅弁を買いました。
トマトライス。
チキンライスからチキンを抜いたようなもの。
食べようとしたら、スプーンがない~!
当たり前、こちらの人はみな右手を使って食べてはりますから。
目の前のトマトライスをそうして食べようとしたら、奥さんが「スプーン、使ってください」。
プラスチックの簡易スプーンをバッグから出してくれました。
いつもこんなふうに持ち歩いているんや!!
ありがたくそのスプーンで頂きました。
空腹だったので、めちゃ美味かった~(^_-)-☆
このあとベッドに転がり、ウイスキーをチビチビやっているうちにウトウトと~。
はて、何時間ほど眠っていたのか、人の気配でふと眼が覚めました。
列車が停車し、どやどやと乗客が入ってきたのです。
時計を見ると、午後11時半。
40分遅れで発車していたので、トリヴァンドラムには午前零時ごろに着くと踏んでいました。
ここは手前の駅かな??
車窓から外を見ても、薄暗くてプラットホームの駅名表示がよく見えない。
親切にしてもらった中年夫婦がおれば、どこの駅か教えてくれたに違いないのですが、2人はすでにぼくが寝ている間に下車していて、下の寝台ではムスリム(イスラム教徒)の女性と太ったおじさんが就寝していました。
他の乗客もみな寝てはる。
入ってきた乗客は予約した席を見つけるのに必死だったし…。
駅を聞こうにも、聞けない。
インドの列車は車内アナウンスがいっさいありません。
駅ではアナウンスしていたかもしれないけれど、クーラー車両とあって、ドアが完全に閉ざされており、全く聞こえない。
トリヴァンドラムは次くらいかなと思って、ベッドでごろごろしていました。
5分ほど経ってから、肩が張っていたので、身体をほぐそうとホームへ降りました。
そして何気に駅名を見たら、何と「トリヴァンドラム」と書いてあるではありませんか~!!
急行列車は必死のパッチで遅れを取り戻していたんです。
え~っ、はよ降りやなあかん~!!
あわてて車内に戻ると、乗ってきた人たちで細い通路がふさがっていました。
焦る、焦る、めちゃめちゃ焦った。
「Sorry、すんません、Sorry、ごめんなさい!」
英語と日本語を混ぜて乗客に避けてもらい、何とか自分の寝台にたどり着きました。
そして すばやく階段に足をかけ、上の寝台に置いていたショルダーバッグ(貴重品などを入れてあります)をわしづかみにして、肩にかけました。
よっしゃ、次はリュックや~!!
でも、このあとが大変でした。
太ったおじさんがイビキをかいて寝ている寝台の下にリュックを押し込んでいたのですが、それを引っ張り出す前にだらんと下がったおじさんの左脚をどけねばならなりません。
あまりに爆睡してはったので、起こしにくい状況。
よし、手で足を持ち上げよう。
かかとにそっと手を据え、ゆっくり脚を持ち上げた、まさにその瞬間、列車がゴトンゴトンと動き始めました。
あかん、早うせな~!!
おじさんの脚をベッドの上に乗せ、リュックを引っ張り出そうとしたら、何かに引っかかっていて動かない~(ToT)
どうしよう、どうしよう!?
このままリュックを放置すべきか。
別にこの駅で降りなくてもよかったんですが、次の駅がどこかわからない。
国土の広いインドのこと、次の駅が何百キロ先になっているかもしれません。
それにこのリュック、ちょかBandの相方(疋田さん)から借りたMontbellの上等の登山用リュックなんです。
ぼくの持ち物の中で、ひょっとしたらリュックが一番高価なのかもしれません~(*_*)
ふと彼の顔がよぎり、これは何としても引き出さなアカンと思いました。
半泣きになり、しゃがみ込んでリュックを出そう、出そうとしていたら、この駅から乗り込んできたバックパッカーの白人女性から「何してるんですか」と声をかけられました。
この人、ぼくのベッドに予約していたみたい。
「駅に降りたいんです。ヘルプ・ミー、ヘルプ~!」
ぼくの必死の形相に彼女は事態を把握してくれ、一緒になってリュックの「救出」に協力して、何とか出せました。
こんな大騒ぎをしているのに、太ったおじさんはますます高イビキ~(((^^;)
その白人女性に「おおきに、おおきに~!」と思わず大阪弁でお礼を言って、リュックを引きずり、「どいて、どいて」とまたも日本語を発して通路を開けてもらい、何とか乗降口にたどり着けました。
インドの列車は扉が開いたままです。
スピードが増してきた~(;o;)
反射的にまずリュックをホームに放り投げ、それから、えい~っと飛び降りました。
イェーツではないですよ~(笑)
ちょっとバランスを崩し、ヨタヨタとしたけれど、ちゃんと着地できました~(*^^*)
思わずオリンピックの体操選手のように両手をVの字に挙げてしまった!
日ごろのランニング効果やと勝手に解釈しています~(笑)
ホームで呆然と立ち尽くし、視線を進行方向に流すと、急行列車は闇の中に消えていきました。
ほんま、めちゃめちゃスリリングな体験でした。
これまで60年間生きてきて、いろんなところに旅をしましたが、これが一番刺激的でした!!
神サンがぼくに味方してくれはったのかもしれませんね。
ヒンドゥの寺院をあちこち参拝したから、きっとヒンドゥの神さんに違いない~(*^^*)
あとでチケットを見たら、「HAPP JOURNEY」と印字されてありました~。
ハハハ~(笑)