武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

優しさに包まれた日本映画 『小野寺の弟・小野寺の姉』

投稿日:

(C)2014『小野寺の弟・小野寺の姉』製作委員会

 

こんな姉と弟がいてもええやん。

 

そう思わせる映画でした。

 

☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆

 

33歳の弟と40歳の姉。

 

顔が全く似ていない。

 

20年来、古びた一軒家で2人だけで同居している。

 

共にかなり不器用な人間。

 

この設定だけで自然と引き込まれる。

 

映画初共演の向井理と片桐はいりが独特なアンサンブルを奏でてくれた。

 

原作は脚本家、西田征史の同名小説。

 

それを自身が舞台演出し、今回、初監督作品として映画化した。

 

全編、ワンカット・ワンシーンの長回しが多いのはそのためなのだろう。

 

弟の進は「ありがとうの香り」を探求する真面目な調香師、こだわりの強い姉より子は眼鏡店の従業員。

 

普段は文句ばかり言い合っているけれど、一緒にスーパーに買い物に出かけたり、遊園地ではしゃいだりと驚くほど仲がいい。

                       (C)2014『小野寺の弟・小野寺の姉』製作委員会

年齢を考えると、歪な感じがせんでもない。

 

それに痛ましくも思える。

 

彼らはしかし、純朴ゆえ、世間体を気にせず、マイペースで悠然と暮らしている。

 

その穏やかな空気感とそこはかとなく醸し出される気遣いが実に心地よい。

 

2人の距離感を優しさで包み込んだ演出も手堅い。

 

ただ、もう少しテンポにメリハリをつけてほしかった。

 

この姉弟に恋愛のチャンスが巡ってくる。

 

進の相手は絵本作家を目指す薫(山本美月)、より子の方は店に来るコンタクトレンズの営業マン浅野(及川光博)。

 

弟は元恋人(麻生久美子)を忘れられず、姉は恋愛恐怖症に陥っている。

 

少年、少女丸出しの行動がもどかしくて、いじらしい。

 

緩やかな軋みを伴って描かれる恋の顛末。

 

より子が浅野とデートする場面の切なさは胸に沁みた。

 

タイミングの悪さが際立つ進にも共感できる。

 

気づけば、彼らを愛おしく思えてきた。

 

姉と弟の映画と言えば、市川崑監督の名作『おとうと』(1960年)を思い浮かべる。

 

観終わった後、社会がすっかり変わったことを痛感した。

 

1時間54分。

 

★★★★(見逃せない)

 

☆25日から大阪ステーションシティシネマほかで公開

 

(日本経済新聞2014年10月24日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)

-映画

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

日本とトルコの深い関わりをストレートで切り込む~『海難1890』

日本とトルコの深い関わりをストレートで切り込む~『海難1890』

日本とトルコが深く関わった出来事に迫る両国の合作映画。   目の前で絶望に陥っている人たちに手を差し伸べる人道的行為を真正面から見据える。   テロの脅威が増し、人命が軽んじられる …

ABCラジオ「おはパソ」の特別鑑賞会でトークショーを務めました~(^_-)-☆

ABCラジオ「おはパソ」の特別鑑賞会でトークショーを務めました~(^_-)-☆

今日は、ABCラジオ『おはようパーソナリティー古川昌希』の特別バージョンともいえるキセラ川西プラザでの特別鑑賞会。 上映作品は、大ヒットしたハリウッドのミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』(2016年) …

ジャジャーン、今年の映画ベストテン発表(日本映画)~♪♪

ジャジャーン、今年の映画ベストテン発表(日本映画)~♪♪

今年も余すところあとわずか。 少し早いですが、お正月映画も出そろったことですので、この1年間に公開された映画のベストテンを決めました。 いつもながら独断と偏見に満ちていますが~(笑) 今日は〈日本映画 …

どこまでもイギリス映画……『ガーンジー島の読書会の秘密』(30日から公開)

どこまでもイギリス映画……『ガーンジー島の読書会の秘密』(30日から公開)

イギリス(連合王国=UK)には王室保護領が2か所、あります。 アイリッシュ海に浮かぶマン島とフランス・ノルマンディーのコタンタン半島沖合に散らばっているチャンネル諸島です。 イギリスの領土なのに、それ …

これぞ、東映実録映画!! 半端やおまへん~『孤狼の血』(12日公開)

これぞ、東映実録映画!! 半端やおまへん~『孤狼の血』(12日公開)

熱きエネルギーが炸裂するアウトロー映画。 父子のような刑事コンビの捜査を介して暴力団抗争を描き上げる。 映画の醍醐味を存分に満喫できる娯楽大作だ。 (C)「孤狼の血」製作委員会 原作は作家、柚月裕子が …

プロフィール

プロフィール
武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。