夕方、自宅近くのうつぼ公園をランニングしていたら、前方から歩いてきたおばさんに「すんません、すんません」と呼び止められました。
スピードが乗ってきたところなのに……。
なんで走ってるぼくに声をかけるんやろ。
不思議に思いながら、仕方なく走るのを止め、おばさんの前で足踏みしました。
「どうしはったんですか?」
「中之島のロイヤルホテルに行きたいんやけど、どっち?」
なんや、そんなことなら散歩している人に尋ねればええのに。
他にいっぱいいてはるのに……。
と、心の中で思いつつ、ちゃんと道順をお教えしました。
すると、このおばちゃん、ベラベラとしゃべり始めたのです。
住之江からやって来て、地下鉄で降り間違え、心斎橋の近くまで行ったところでUターンし、このうつぼ公園にたどり着いたと。
さらに、30年ぶりに会う友達との思い出話まで……。
おそらく年齢は60歳代の後半。
小柄で、小太り、大きなメガネをかけてはります。
茶色の髪の毛はカツラっぽかったけど。
一見、夫婦漫才師の大助・花子の「花子」とよく似ていました。
「あのぅ、もういいですか。ぼくランニング中なんです」
ようやく話が途切れたところで、思い切って言うと、おばちゃん、悪びれもせずにこう返しました。
「近づいてきはったから、つい道を訊こうと思って」
あのなぁ、走ってたんや!!
「ハハハ、ジョッギングしてはったんや。気づかなんだ。ほんまにおおきに!」
なんで気づけへんねん。
ハーハー、言うて走ってたやんか。
もう呆れて、怒る気にもなれず、「さいなら」と言っておばちゃんの元を去り、再び走り始めました。
ペースが狂ってしまって、アキマへん、全然、ピッチが速ならへん。
5分ほど経ったころでしょうか、バラ園をちんたら走っていたら、500円玉が落ちていたので、反射的に拾うと、横から聞き慣れた大きな声が。
「それ、あたしのお金よ」
さっきのおばちゃんでした。
「ほれ、500円玉に名前書いたあるねん」
えっ!?
コインの裏を見ると、「林」とマジックインクで書いてある。
林さんという人なんや!
ここからタクシーでロイヤルホテルに行こうと思って、財布に小銭があるか調べていたら、500円玉が落ちたとか。
めちゃ近いんやから、歩いていったらええのに。
おばちゃん、手に持っていた財布から、コインを取り出しはりました。
「林」と書かれた硬貨がいっぱいある。
「できる限り、名前を書いてますねん」
そう言って、細字用のマジックインクを見せてくれた。
なんでまたお金に名前なんぞ??
その疑問をぶつけると、「金は天下の回りモノ言いますやろ。自分のお金がいつか戻ってきたら、オモロイですわな」
ほんま、オモロイ発想ですわ。
でも、意味はちょっと違うと思うねんけど……。
ぼくの知っている限り、お金に自分の名前を書いている人は、このおばちゃんしか知りません!!
林さんは、お札にも名前を書いてはって、紙幣の右下に「林」と明記した1000円札と1万円札を披露してくれはりました。
驚きを通り越して、声も出ませんでした。
その時点で、脚は完全に止まっていました。
「そんで、自分のお金戻ってきたことあるんですか?」
「はいなー、あります、あります。うちの近所の商店街でコロッケを買うたとき、お釣りの500円玉に『林』と書いてありましたわ」
うゎーっ! オモロイなー(^o^)v
「あたしのお金が今ごろ、どんな人の手に渡っているんかなと思うたら、楽しゅうて仕方がないねん」
けったいなおばちゃんや。
でも、正味、オモロイ!!
このあと、ぼくは走る気力が失せ、世の中にはいろんな人がいてはるなぁ~とゲラゲラ思い出し笑いしながら、うつぼ公園から歩いて帰りました。
でも、いい1日になったと思うてます。
この人の写真を撮れなかったのが、残念でしたが……!!!
こんなオモロイ大阪のおばちゃんと会いました~(^o^)v
投稿日:2012年3月24日 更新日:
執筆者:admin