39年前、中国でメガヒットした犯罪映画『君よ憤怒の河を渉れ』(1974年)。
主演の亡き高倉健へのオマージュとしてジョン・ウー監督がオール日本ロケで再映画化した。
大阪に本社を置く製薬会社の顧問弁護士ドゥ・チウ(チャン・ハンユー)が殺人の濡れ衣を着せられる。
何者かにハメられたのだ。
オリジナルを大胆にアレンジし、主役を検事から弁護士に変えた。
変装して巧みに逃げるこの中国人男性を大阪府警の敏腕刑事、矢村(福山雅治)が執拗に追う。
そこに女性の殺し屋コンビが絡み、鮮烈な追走劇が始まる。
監督の得意芸ともいえるスローモーション撮影は健在だ。
多彩なアングルのカット割り、クローズアップとロングの入れ替えも随所に挿入され、メリハリのある映像のオンパレードとなった。
お決まりの白い鳩も登場する。
「逃げる者」と「追う者」という2人の関係に友情が芽生える象徴的な場面に使われていた。
白鳩を目にした瞬間、なぜか安堵。
川面を爆走する水上ジェットスキーの追尾、バイクによる牧場の襲撃……。
日本では起こり得ない銃撃シーンを波状的に見せつける。
全編を包み込むミステリー色が存外に効いていたと思う。
あべのハルカス、道頓堀、大阪城、中之島など大阪の名所が次々と出てくる。
映像のマジックによって妙に垢抜けした大都会が映し出された。
残念なのは大阪弁が聞けなかったこと。
ハンユーは高倉健を多分に意識していたと思うが、自分のカラーを出そうと大健闘。
福山は少し肩に力が入りすぎていた感じ。
製薬会社社長役の國村準、さすが存在感を際立たせていた。
大阪を舞台にした海外のアクション大作では、リドリー・スコット監督の『ブラック・レイン』(1989年)に次いで2作目。
活力ある「大阪映画」が誕生した。
1時間50分
★★★★(見逃せない)
☆2月9日からTOHOシネマズ梅田ほか全国ロードショー
☆配給:GAGA
(日本経済新聞夕刊に2018年2月9日に掲載。許可のない転載は禁じます)