寒いけれど、あまりに好天だったので、午後3時半ごろからランニングを開始。
昨夜、ちょっとアルコールを入れすぎたので、シャキッとしたかったし。
20分ほど走り、中之島のバラ園に差しかかったとき、ひとりのお爺さんと目が合いました。
西日をまともに受け、シルエットになっていたのですが、高校時代のK先生だと直感でわかり、ぼくは思わず足を止めてしまった。
その先生は個性の強い、それでいて生徒思いの英語教師でした。
担任ではなかったですが、妙に印象深くて。
チェックのジャケットの上に厚めのコート。
ピンク色のカッターシャツがやけに目立っていました。
オシャレな紳士です。
当時は野暮ったい服を着てはったのに、えらい変わりようや。
「K先生、お久しぶりです」
ランニング姿に黒いサングラスをかけ、ウォークマンを耳にかけている男からいきなり声をかけられたものだから、その人はギョッとして立ち尽くしていました。
「先生、ぼくですよ、武部です。授業をよくさぼっていた」
サングラスとウォークマンをとり、素顔を見せると、お爺さんはまじまじとぼくの顔を凝視しました。
〈高校時代はがたいのある人だったのに、随分、小柄になりはったなぁ〉
髪の毛の生え方とアゴの張り具合、そしてクリッとした大きな目は当時の面影を濃厚に宿していました。
「先生、先生、ぼくのこと忘れましたか。生意気やったから、絶対、覚えてはるでしょ。便所ゲタでカランカランと廊下を走っていた武部ですよ」
「……」
反応がない。
〈ちょっとボケてはるんやろか……〉
悪い方に考えてしまった。
と、そのとき、お爺さんが初めて言葉を発したのです。
「あのぅ、わたし、K先生ではないです。Wと言います。人違いされているのでは」
えっ!
こちらが凍りついてしまった。
そそっかしいから、時々、間違えることはあるが、体が小さくなっただけで、瓜二つなので、K先生と確信していたのに……。
「生まれてこの方、先生と呼ばれたのは初めてです。光栄です。今年はええ年になりそうですわ」
お爺さんはケラケラと素敵な笑みを浮かべました。
「す、す、すんません。あまりによく似ておられたので、間違えました」
ぼくがひたすら恐縮していると、こんな質問を投げかけられました。
「あなたのお名前は? 教えてくれませんか」
突然のことで吃驚したけれど、「武部といいます」とごく自然に口から出ました。
「武部さん……。お名前、覚えておきましょう。さようなら」
老紳士は笑みを絶やさず、軽く会釈をして去っていきました。
わずか1分ほどの出来事。
でもジンジンと心がほんわかとしてきて、無性にうれしくなりました。
西日の暖かさに背中を押され、さぁ、ランニングを再開。
きょうは1時間ほどで切り上げるつもりだったのに、爽快な気分に包まれ、気がつけば、淀川の豊里大橋まで来ていました。
帰宅したのは、とっぷり日が暮れた午後6時15分。
2時間40分も走ってしまった~!!
今年の最長ランです(まだ3回目ですが)。
しかし不思議とバテていなかった。
あっ、きのうの大学の授業で、「ちょっといいこと」というテーマで学生にコラムを書かせたっけ。
そのことを思い出し、また心がほっこりしました。
ちょっといいこと~♪
投稿日:2012年1月7日 更新日:
執筆者:admin