武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

心ほんのりと~珠玉のノルウェー映画『クリスマスのその夜に』

投稿日:2011年12月10日 更新日:

あと2週間でⅩmasですね。
『クリスマスのその夜に』
ズバリ、素敵なクリスマス映画が公開されます。
    ☆     ☆     ☆     ☆     ☆
クリスマスメイン
BulBul Film as ©2010 Pandora Filmproduktion GmbH
『クリスマス・キャロル』のように、この“特別な日”はドラマになりやすい。
映画の名作も多々ある。
ノルウェーの小さな町を舞台にした本作では、紡ぎ合わせた珠玉のエピソードが実に味わい深いクリスマスを演出していた。
監督は同国のベント・ハーメル。
妻に三行半を突きつけられ、子供たちと会えなくなった男。
イスラム教徒の女の子に接近したいがためにクリスチャンでないと嘘をつく少年。
クリスマスさぶ(1)
BulBul Film as ©2010 Pandora Filmproduktion GmbH
なかなか離婚しない不倫相手の男に業を煮やす年増の独身女性……。
こう書くと、下世話な話に思えるが、登場人物はみな真剣そのもの。
それゆえ、とんでもない行動に打って出て、得も言われぬ可笑しさを生み出す。
ウケ狙いしない笑いには品がある。
切なさ、哀しさ、やるせなさ、愚かしさ。
こうした人間の様々な心模様がイブの夜に一気に示される。
その基盤になるのが、情を含めた広い愛だ。
そう、この映画はいろんな形の愛を見せてくれる。
サンタクロースの服、マフラー、セーター、帽子などの「赤」が目に焼きついた。
北欧の寒々しい銀世界にあって、よけいにその原色が際立つ。
きっと愛情の証しなのだ。
そう思って見れば、納得できる。
生老病死。
人が避けて通れないプロセスを、ハーメル監督は慈愛に満ちた眼差しで見据える。
そこに苦だけでなく、人生の悦びをそっと添える。
ほほ笑ましく思えるのはそのためだろう。
罪なき母子に銃口を向ける女性狙撃手がいきなり冒頭で映し出される。
平和な町にそぐわない意表を突く場面。
それが物語の伏線となり、ラストで大きな感動を生む。
この展開にはうならされた。
クリスマスサブ(2)
BulBul Film as ©2010 Pandora Filmproduktion GmbH
日常のさり気ないことが妙に愛おしく思える。
そう感じさせる温かい群像ドラマ。
やはりクリスマスは映画の題材にうってつけだ。
1時間25分
★★★
☆シネ・リーブル梅田ほかで公開
(日本経済新聞2011年12月9日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)

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プロフィール

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。