武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

究極の選択、あなたならどうする? 『サンドラの週末』

投稿日:

この映画の登場人物すべての気持ちが痛いほどよくわかりました。

 

はて、自分ならどうする??

 

最後まで自問しながら観続けました。

 

☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆

 

© Les Films du Fleuve -Archipel 35 -Bim Distribuzione -Eyeworks -RTBF(Télévisions, belge) -France 2 Cinéma

© Les Films du Fleuve -Archipel 35 -Bim Distribuzione -Eyeworks -RTBF(Télévisions, belge) -France 2 Cinéma

逆境をいかに乗り越えるか。

 

この大きなテーマを、1人の女性の2日間にわたる行動を通して描き切った。

 

解雇という切実な問題に焦点を当てた実にスリリングな映画。

 

現実を直視する飾り気のないストレートな演出が光る。

 

監督はベルギーのジャン・ピエールとリュックのダルデンヌ兄弟。

 

市井の人たちの暮らしぶりを感傷抜きにドキュメンタリータッチで追うスタイルは、本作でも踏襲している。

 

サンドラはソーラーパネル工場で働く2児の母親。

 

心身の不調で長らく休職していたが、ようやく復職の目途が立った。

 

その矢先、解雇を言い渡される。

 

再雇用するため会社側が突きつけた条件がこれ。

 

16人の同僚の半数以上からボーナス受給拒否の承諾を得るというもの。

 

© Les Films du Fleuve -Archipel 35 -Bim Distribuzione -Eyeworks -RTBF(Télévisions, belge) -France 2 Cinéma

© Les Films du Fleuve -Archipel 35 -Bim Distribuzione -Eyeworks -RTBF(Télévisions, belge) -France 2 Cinéma

金か職場仲間か、同僚たちは究極の選択を迫られる。

 

彼女は夫に連れられ、週末に1人1人彼らを説得して回る。

 

何とも気の重い訪問だ。

 

© Les Films du Fleuve -Archipel 35 -Bim Distribuzione -Eyeworks -RTBF(Télévisions, belge) -France 2 Cinéma

© Les Films du Fleuve -Archipel 35 -Bim Distribuzione -Eyeworks -RTBF(Télévisions, belge) -France 2 Cinéma

みなサンドラの状況を酌みとってはいるが、経済的に苦しく、情だけでは済まされない。

 

そのことを彼女自身もよく理解している。

 

訪問先で感情的にならず、相手に同じ文言を繰り返し伝えるサンドラ。

 

その誠実でひたむきな姿を手持ちカメラが肉迫する。

 

終始、淡々と撮り続ける。

 

だからこそ、過酷な現実に向き合う人間の強さと弱さが伝わってくる。

 

© Les Films du Fleuve -Archipel 35 -Bim Distribuzione -Eyeworks -RTBF(Télévisions, belge) -France 2 Cinéma

© Les Films du Fleuve -Archipel 35 -Bim Distribuzione -Eyeworks -RTBF(Télévisions, belge) -France 2 Cinéma

サンドラはごく普通の女性だ。

 

そんな主人公をノーメイクの等身大で演じたマリオン・コティアールが素晴らしい。

 

心の機微をさり気なく表現する繊細な演技にうならされた。

 

成果主義が「弱者」を切り捨てる現状をあぶり出した。

 

しかし労働問題にせず、人間の尊厳を謳い上げた点を高く評価したい。

 

そしてダメ元でもまずは行動に移すことの大切さを改めて実感した。

 

はて、あなたならどうする?

 

1時間35分

 

★★★★(見応えあり)

 

☆23日からテアトル梅田、30日から京都シネマとシネ・リーブル神戸で公開

 

(日本経済新聞2015年5月22日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)

-映画

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

映画の地を訪ねて(5)京都・相国寺瑞春院 ~『雁の寺』

映画の地を訪ねて(5)京都・相国寺瑞春院 ~『雁の寺』

とっくに済んでしまいましたが、9月8日は帰雁忌。 作家・水上勉さんの没日。 今年は7回忌ですね。 下の原稿に面白いエピソードを載せています。     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆ …

生誕100年 木下惠介監督全作品上映~!!!

生誕100年 木下惠介監督全作品上映~!!!

黒澤明監督と並び称される日本映画界の巨匠、木下惠介監督(1912~1998年)。   生誕100年を記念し、21日~9月7日、大阪・九条のシネ・ヌーヴォで全作品49本が一挙上映されます。   …

話題の大阪映画~『プリンセス トヨトミ』

話題の大阪映画~『プリンセス トヨトミ』

大阪を舞台にしたベストセラー小説の映画化です。  (C)2011 フジテレビジョン 関西テレビ放送 東宝 7月8日金曜日、午後4時、大阪が全停止――。 冒頭から意表を突かれる。 荒唐無稽と言おうか、何 …

ベタつき感のない大阪映画~『オカンの嫁入り』

ベタつき感のない大阪映画~『オカンの嫁入り』

      ©2010『オカンの嫁入り』製作委員会 このタイトルを観て、ウ~~ンと引く人がいるかもしれないが、この映画は見応えありますよ。 今日の日本経済新聞夕刊に掲載されたぼくの映画エッセ …

『列車の到着』の映像、100余年の時を隔てて~

『列車の到着』の映像、100余年の時を隔てて~

昨日、5年前に卒業したゼミ1期生(関西大学社会学部マスコミュニケーション学専攻)の同窓会。すっかり社会人に変貌していた教え子たちと飲んで語らい、じつに楽しいひと時を過ごしました。 ちと深酒してしまって …

プロフィール

プロフィール
武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。