配給:角川映画
©レオニーパートナーズ合同会社
女性の強さを描いた映画が案外、多いですね。
この映画はその極めつけです~!
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自分の意志を貫徹する人間がいかに強いか。
そのことを1人の米国人女性の物語として描いた。
主人公は世界的な彫刻家イサム・ノグチの母レオニー・ギルモア。
家族の絆をテーマに映画を撮り続ける松井久子監督の情念が宿っている。
編集者になりたいと願望するレオニー(エミリー・モーティマー)は20世紀初頭にあっては、非常に進んだ女性だ。
ニューヨークで日本人の若手詩人、ヨネ・ノグチこと野口米次郎(中村獅童)の作品を翻訳、編集したことから、2人は恋に落ち、結ばれる。
その瞬間、彼女に波乱の人生が訪れる。
妊娠した途端、ヨネが帰国したのである。
失意の中、男の子を出産するが、反日感情の高まりで居づらくなり、ヨネの誘いを受けて母子で来日する。
わが子の将来を考えてのことだが、勇気ある決断と行動力には頭が下がる。
この思い切りの良さが彼女の生きる信条なのだろう。
明治末期の日本。
西洋人には得体の知れない東洋の国に映ったはず。
そんな異国の地で英語を教えながら育児に励むが、ヨネに正妻がいたことを知り、衝撃を受ける。
裏切られた彼女はしかし、日陰的な存在に甘んじず、自立を目指す。
逆境を生き抜く女性のひたむきさと逞しさを映画は執拗に伝える。
演出にやや力みを感じたが、単に耐えるのではなく、自分に正直であろうとする気概の大切さも訴えかける。
イサムの芸術的な才能を見出すや、息子の背中を押して単身、渡米させる。
父親が誰であるかを明かさず、躊躇なく第二子(女の子)を産む。
運命に流されまいと必死で、何とか自ら舵を取ろうとする。
その姿は実に晴々としている。
100年前にこんな外国人が日本にいたとは全く知らなかった。
7年がかりの映画化。
よくぞ“発掘”してくれた。
2時間12分。
★★★(見応えあり)
(日本経済新聞2010年11月19日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)
☆全国で公開中
100年前、こんなたくましいアメリカ人女性が日本にいました~『レオニー』
投稿日:2010年11月23日 更新日:
執筆者:admin