武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

未分類

100年前、こんなたくましいアメリカ人女性が日本にいました~『レオニー』

投稿日:2010年11月23日 更新日:

レオニー
配給:角川映画
©レオニーパートナーズ合同会社
女性の強さを描いた映画が案外、多いですね。
この映画はその極めつけです~!
     ☆     ☆     ☆     ☆    ☆
自分の意志を貫徹する人間がいかに強いか。
そのことを1人の米国人女性の物語として描いた。
主人公は世界的な彫刻家イサム・ノグチの母レオニー・ギルモア。
家族の絆をテーマに映画を撮り続ける松井久子監督の情念が宿っている。
編集者になりたいと願望するレオニー(エミリー・モーティマー)は20世紀初頭にあっては、非常に進んだ女性だ。
ニューヨークで日本人の若手詩人、ヨネ・ノグチこと野口米次郎(中村獅童)の作品を翻訳、編集したことから、2人は恋に落ち、結ばれる。
その瞬間、彼女に波乱の人生が訪れる。
妊娠した途端、ヨネが帰国したのである。
失意の中、男の子を出産するが、反日感情の高まりで居づらくなり、ヨネの誘いを受けて母子で来日する。
わが子の将来を考えてのことだが、勇気ある決断と行動力には頭が下がる。
この思い切りの良さが彼女の生きる信条なのだろう。
明治末期の日本。
西洋人には得体の知れない東洋の国に映ったはず。
そんな異国の地で英語を教えながら育児に励むが、ヨネに正妻がいたことを知り、衝撃を受ける。
裏切られた彼女はしかし、日陰的な存在に甘んじず、自立を目指す。
逆境を生き抜く女性のひたむきさと逞しさを映画は執拗に伝える。
演出にやや力みを感じたが、単に耐えるのではなく、自分に正直であろうとする気概の大切さも訴えかける。
イサムの芸術的な才能を見出すや、息子の背中を押して単身、渡米させる。
父親が誰であるかを明かさず、躊躇なく第二子(女の子)を産む。
運命に流されまいと必死で、何とか自ら舵を取ろうとする。
その姿は実に晴々としている。
100年前にこんな外国人が日本にいたとは全く知らなかった。
7年がかりの映画化。
よくぞ“発掘”してくれた。
2時間12分。
★★★(見応えあり)
(日本経済新聞2010年11月19日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)
☆全国で公開中

-未分類

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

恒例の「ルナ会」、今年も楽しかった~(^_-)-☆

恒例の「ルナ会」、今年も楽しかった~(^_-)-☆

昨日、関大梅田キャンパスでの講演のあと、ミナミ・日本橋へ駆けつけ、恒例の「ルナ会」。   ぼくが現役の映画記者をしている時に出会ったメンバーです。   毎年暮れ、割烹「清月」に集い …

武部はつ子の動物イラスト原画展、無事に終了しました~(^_-)-☆

武部はつ子の動物イラスト原画展、無事に終了しました~(^_-)-☆

武部はつ子さんの『アニマルお見合い写真…ならぬイラスト展』(原画展)が今日(11月5日)、無事に終了しました。 5日間と短かったですが、約120人と想定外に多くの方が観に来ていただき、びっくりしました …

最高の爆笑「格言」~(^_-)-☆

最高の爆笑「格言」~(^_-)-☆

読めば読むほど意義深い「格言集」(?)が知人から送られてきました。 以前、テレビ番組『笑点』で紹介されたネタらしいですが……(*’▽’) 納得できて、爆笑~!! シャレと思って …

アビーロード・スタジオ、歴史的建造物に指定~♪

アビーロード・スタジオ、歴史的建造物に指定~♪

バンクーバー五輪がたけなわです。 きょうは、注目されている女子フィギュアの浅田真央がショートプログラムで完璧な演技を披露し、2位につけました。 はじけるような笑顔で滑っていたのがよかった。テレビで華麗 …

今朝、ABCテレビ『おはよう朝日 土曜日です』に出演しました~(^_-)-☆

今朝、ABCテレビ『おはよう朝日 土曜日です』に出演しました~(^_-)-☆

先ほど、ABCテレビの朝の情報番組『おはよう朝日 土曜日です』の映画特集に出演してきました。 『気分スッキリ名作&最新映画特集』 短い時間でてんこ盛りの内容。 何を喋ったのか忘れましたが、スタジオが笑 …

プロフィール

プロフィール
武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。