武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

アンジェイ・ワイダ監督の遺作『残像』、24日から公開

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Ⓒ 2016 Akson Studio Sp. z o.o, Telewizja Polska S.A, EC 1 – Łódz Miasto Kultury, Narodowy Instytut Audiowizualny, Festiwal Filmowy Camerimage- Fundacja Tumult All Rights Reserved.

ポーランドの世界的な巨匠アンジェイ・ワイダの遺作。

昨年10月、90歳で他界した監督が、実在した芸術家の強靭な生き方を通して普遍的なメッセージを残した。

それは表現の自由の尊さを忘れてはならないということだ。

Ⓒ 2016 Akson Studio Sp. z o.o, Telewizja Polska S.A, EC 1 – Łódz Miasto Kultury, Narodowy Instytut Audiowizualny, Festiwal Filmowy Camerimage- Fundacja Tumult All Rights Reserved.

前衛画家ストゥシュミンスキ(1893~1952)は第一次大戦中、事故で左腕と右脚をなくし、松葉づえが欠かせない。

それをバネにして創作に励み、第二次大戦前には彼の絵画と美術理論が国内外で高く評価された。

Ⓒ 2016 Akson Studio Sp. z o.o, Telewizja Polska S.A, EC 1 – Łódz Miasto Kultury, Narodowy Instytut Audiowizualny, Festiwal Filmowy Camerimage- Fundacja Tumult All Rights Reserved.

戦後は一転、状況が激変する。

祖国がソ連主導の社会主義体制に組み込まれ、芸術にも政治性が要求されるようになった。

映画は画家の最晩年の4年間(49~52年)に絞られる。

自宅のアトリエで創作していると、室内が赤く染まってくる。

スターリンの肖像を描いた巨大な赤い垂れ幕が窓を覆ったからだ。

国家権力が不気味に忍び寄る象徴的なシーンだ。

その垂れ幕を松葉づえで破り、逮捕される。

そこから骨太なドラマが始まる。

Ⓒ 2016 Akson Studio Sp. z o.o, Telewizja Polska S.A, EC 1 – Łódz Miasto Kultury, Narodowy Instytut Audiowizualny, Festiwal Filmowy Camerimage- Fundacja Tumult All Rights Reserved.

抽象画を無用の長物と見なす政府に対し、主人公は果敢に意義を唱え、表現の自由を主張するのだ。

誰もが体制にしがみつき、口を閉ざす中、かくも信念を貫き通すとは、よほどの勇気と不屈の精神がないとできない。

かといって、この人物を英雄視しない。

家族を軽んじ、一人娘を傷つけてしまう、そんな弱さもあけすけと見せる。

大学の教え子が何かとサポートするも、窮地に追いやられる。

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迫害と弾圧。

基本的人権を容赦なく剥奪する国家の素顔が一番、恐ろしく感じられた。

現代でも同じことが繰り返されている。

警鐘と受け止めたい。

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6年前、古都クラフクで奇跡的にワイダ監督と出会えた。

その時、「1989年に自由を得た民主化達成が何よりも嬉しい」と話してくれた。

自国の現代史を検証してきた監督の遺志が本作からにじみ出ていた。

1時間39分。

★★★★(見逃せない)

☆6月24日(土)~シネ・リーブル梅田
7月1日(土)~シネ・リーブル神戸
7月22日(土)京都シネマ にて順次公開

(日本経済新聞夕刊に2017年6月23日に掲載。許可のない転載は禁じます)

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武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。