武部好伸公式Blog/酒と映画と旅の日々

ケルト文化に魅せられ、世界中を旅するエッセイスト・作家、武部好伸。映画と音楽をこよなく愛する“酒好き”男の日記。

映画

めちゃ元気をもらえました!!~イタリア映画『これが私の人生設計』

投稿日:

超前向きで、少々のことではへこたらない。

 

そんなパワフルな女性建築家が織りなすイタリア映画。

 

幾度も壁にぶち当たって奮闘する姿をコミカルに描きながら、社会性のあるテーマに踏み込んでいる。

 

主人公のセレーナはチャーミングな独身女性。

(C)2014 italian international film s.r.l

(C)2014 italian international film s.r.l

世界を股にかけ、設計技師としての才能を存分に発揮させる。

 

まさに輝くキャリア・ウーマンである。

 

彼女に扮したパオラ・コルッテレージはイタリアの国民的歌手。

 

底抜けに明るいヒロインを嫌味なく演じた。

 

夫のリッカルド・ミラーニ監督と息の合ったところを見せる。

 

そのまま順風満帆にいくはずのセレーナがホームシックに罹り、人生をリセットすべく故国へ戻る。

 

ところがイタリアの建築業界は完全な男性社会。

 

この現実は意外だった。

 

もっと開けていると思っていたのに、女性への不信感と蔑視の空気が渦巻いている。

 

何とかもぐり込んだ設計事務所の社長の傲慢ぶりが目に余る。

 

権力を振りかざす様は実に滑稽だ。

 

正業だけでは生活できず、アルバイトでレストランに勤める。

 

このように主人公を取り巻く厳しい状況を見せつけてから、魅力的な男性を登場させる。

 

店の経営者フランチェスコ(ラウル・ボヴァ)。

(C)2014 italian international film s.r.l

(C)2014 italian international film s.r.l

イケメンで優しい。

 

間違いなく恋愛ドラマへと発展すると思いきや、そうではなかった。

 

種明しはしないが、友情で結ばれるところが物語のエッセンスとなる。

 

2人は共に世間から孤立し、浮き上がっている。

 

いわば似た者同士がタッグを組み、あっと驚く裏技を使って巨大な公営住宅のリフォームに着手する。

 

この展開が実に面白い。

 

共犯者となった彼らのスリリングな「演技」が見ものだ。

 

全て伏線があり、構成がしっかりしている。

 

とことん笑顔で突き進むセレーナ。

 

すごく元気をもらえる映画だった。

 

1時間43分

 

★★★★(見逃せない)

 

☆5日から大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹などで公開

 

(日本経済新聞夕刊に2016年3月4日に掲載。許可のない転載は禁じます)

-映画

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

児童移民の実態に迫る~イギリス映画『オレンジと太陽』

児童移民の実態に迫る~イギリス映画『オレンジと太陽』

なかなか骨太な社会派の映画が公開されます。 『オレンジと太陽』 オススメです。      ☆     ☆     ☆     ☆     ☆ 児童移民。 子供を強制的に海外へ移送すること。 民主国家を …

渾身のドキュメンタリー大作『東京裁判』、36年ぶりにリフレッシュして甦ります!!

渾身のドキュメンタリー大作『東京裁判』、36年ぶりにリフレッシュして甦ります!!

8月になると、「戦争」関連のイベントや映画、ドラマが目立ってきますね。 あの戦争を風化させないためには、せめてこの時期だけでもリフレインするのはいいことだと思います。 そんな中、巨匠・小林正樹監督の渾 …

安倍首相、辞めはりますね

安倍首相、辞めはりますね

きのう、ぼくとおない年の安倍首相が辞意を表明しました。 事あるごとに責任を痛感していると明言しながら、一度たりとも責任を取らなかったなぁ。 「長」たる者……、一般社会なら、絶対にあり得ないんやけど。 …

メディアの陰の部分に迫る社会派映画~『ニュースの真相』

メディアの陰の部分に迫る社会派映画~『ニュースの真相』

4月に公開された米映画「スポットライト 世紀のスクープ」と同様、ジャーナリストの素顔に迫った実話の映画化。 本作も調査報道を題材にしているが、特ダネをモノにした成功譚ではなく、それが誤報といわれた顛末 …

『3時10分、決断のとき』~理屈抜きに面白い西部劇~!!

『3時10分、決断のとき』~理屈抜きに面白い西部劇~!!

 これは面白かった。日経新聞の映画評で迷うことなく★★★★★をつけました。絶対に満足しますよ~!   *     *     *     *     *     * 久々の本格西部劇。銃弾が飛び交い、 …

プロフィール

プロフィール
武部好伸(タケベ・ヨシノブ)
1954年、大阪生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。映画、ケルト文化、洋酒をテーマに執筆活動に励む。日本ペンクラブ会員。関西大学非常勤講師。