『人生の特等席』という邦題にまず惹かれますね。
懐かしいアメリカ映画、そんな印象を受けました。
拙文をどうぞ~(^o^)v
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
この人の主演映画とあらば、ぜひ観てみたい。
そう思わせる俳優の1人、クリント・イーストウッドが老境の滋味な男を巧演した。
野球を通して親子の絆を描いた、いかにもアメリカ映画らしい家族ドラマだ。
イーストウッドが撮った『グラン・トリノ』(2008年)で、自ら主演した老人が壮絶な最期を見せた。
それを機に俳優業を辞めると公言したが、本作のストーリーを気に入り、今回の出番と相成った。
監督は愛弟子のロバート・ロレンツ。
演じたのは大リーグのスカウトマン。
データ主義の時代にあって、ガスという男は現場主義を貫き、選手の一挙手一投足を見て、有望株を発掘してきた。
「化石」と揶揄されようが、自分流を変えない。
頑固一徹、偏屈な独居老人。
昨今、得意とする役どころだ。
82歳の重みと孤愁がにじみ出ている。
球場で黙々とスコアをつける姿は実に様になっていた。
1人娘のミッキー(エイミー・アダムス)は野球一筋の父を反面教師にし、弁護士として活躍している。
別世界に生きる親子。
2人が会えば、必ずいがみ合う。
若い選手の技術やセンスを直感で看破する才があるのに、一番身近なわが子の心が読めない。
そのギャップが哀しくもあり、映画はそこをしつこく突く。
水と油のような父娘。
いかに歩み寄るのか。その手立てとして、ガスの最後のスカウトにミッキーが付き添うという展開を用意する。
道中、2人のしがらみや確執が浮き彫りにされる。
非常にわかりやすく、予定調和的な内容だ。
詰めも甘いと感じるだろう。
しかしそれを承知の上で納得させる力がこの作品にはある。
バットに球が当たる音を聞き、打者の技能がわかる場面がことさら印象的だった。
目に見えないところに真理がある。
家族の関係もそうに違いないと思った。
1時間51分
★★★
☆23日から全国ロードショー
(日本経済新聞2012年11月16日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)