『浪花の映画大特集』が始まった大阪・九条の映画館シネ・ヌーヴォで、トークショーを終え、帰ってきました。
谷崎潤一郎の名作『春琴抄』を巨匠・伊藤大輔監督が映像に甦らせた『春琴物語』の上映後のイベント。
主演の京マチ子さんが菩薩のように美しかった~!!
持ち時間が少なくて、お笑いを取るゆとりがなかったのが残念でしたが……。
さて、先日、原田芳雄さんが71歳で亡くなりはりました。
大好きな俳優だっただけに、無念です。
この人が最後にエネルギーをめいっぱい注いだ映画『大鹿村騒動記』が公開されています。
その映画評をどうぞ。
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(C)2011「大鹿村騒動記」製作委員会
南アルプスを望む長野県大鹿村を舞台に、300余年も続く村の伝統芸能、歌舞伎を絡ませたヒューマン・ドラマ。
この山村に魅了され、企画を立ち上げた故原田芳雄が主演を務め、阪本順治監督の手で人情味あふれる群像劇に仕上がった。
鹿料理店を営む風祭善(原田)は、サングラスにテンガロンハットが様になるダンディーな初老の男。
歌舞伎では村一番の花形役者として名を馳せ、それが心の拠り所になっている。
気楽に男やもめを貫く善だが、舞台本番の5日前、予期せぬ事態が。
18年前、駆け落ちして村を去った妻の貴子(大楠道代)と幼なじみの治(岸部一徳)が帰ってきたのだ。
しかも認知症気味の彼女を持て余した治から「返す」と言われて……。
何と強烈な導入部。
このあと善はどんな行動を取るのか。
三角関係を軸に、リニア新幹線の誘致問題、歌舞伎の稽古などを織り込みながら、物語がゆるりゆるりと展開する。
コミカルに、かつ軽妙に描かれる人物模様が観ていて実に楽しい。
まさに阪本監督の真骨頂。
近作では演出に空回りが目立ったが、本作では全くよどみがない。
クライマックスの歌舞伎の場面は見応え十分だった。
役者に変身した面々が一心不乱に熱演し、驚くほど端整な所作を披露。
佐藤浩市の女形もよく似合っていた。
さすがプロの俳優だ。
演目は『六千両後日文章 重忠館の段』。
平家滅亡後の後日談で、頼朝に立ち向かう景清に善が扮する。
ともに「敗戦の将」。
苦笑するしかないが、そこに男の意地と矜持を重ね合わせる。
貴子を絡ませるところがミソ。
全てロケで、2週間で撮り終えたが、そんなふうには見えなかった。
どこか関西風味のけったいな人物たちが村の風情と見事に溶け合っていたから。
原田芳雄、渾身の遺作となった。
1時間33分
★★★★
(日本経済新聞2011年7月22日夕刊『シネマ万華鏡』。ブログへの掲載を許諾済み。無断転載禁止)
原田芳雄、渾身の遺作~『大鹿村騒動記』
投稿日:2011年7月23日 更新日:
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