戦後の不条理な歴史的悲劇と言えば、シベリア抑留を思い浮かべますが、実はモンゴルでも過酷な抑留が行われていました。
古巣新聞社同期のジャーナリスト、井手裕彦さんが単身ロシアとモンゴルで取材+調査を進め、その成果をまとめたのが1296ページにも及ぶ大書『命の嘆願書――モンゴル・シベリア抑留日本人の知られざる物語を追って』(2023年、集広社)でした。
その後、モンゴルに焦点を絞り、再び現地に飛んで生死すら不明だった抑留者の「生きた証」を入手し、遺族に伝える活動を続けています。
「死亡記録配達人」――。
自らこう称している井手さん、すごいことをやってはります、脱帽です!
モンゴルへは1万4000人が連行され、抑留中に1700人が亡くなったそうです。
その井手さんが、このほど角川新書から『モンゴル抑留 見捨てられた死者たち』を出版しました。

10年間にわたるモンゴル抑留調査の集大成とのこと。
同期の誼(よしみ)で1冊、謹呈してもらいましたが、濃密で、かつ貴重な記録集でした!
いやぁ、知らないことが多かった。
第2次世界大戦末期、ソ連の要請で対日参戦したモンゴルは満州侵攻に派兵した見返りに、労働力として日本人捕虜の提供を受け、それがモンゴル抑留の始まりだったんですね。
シベリアに比べて抑留者の死亡率が高かったのは民間人が多かったからと知り、吃驚しました。
えっ、民間人も連行されたのか!?
まだまだあります。
日蒙国交樹立の際、戦後賠償に絡み、抑留者と遺族を犠牲にしたという、あっと驚く、「歴史の闇」を暴露しています。
今でも約200人の身元が特定されず、約200柱の遺骨が現地の凍土に眠っているそうです。
それが本の副題「見捨てられた死者たち」なんですね。
モンゴルは現在、親日国ですが、いつまでも「負の歴史」に蓋をしたままの友好でいいのかと疑問に思い、「パンドラの箱」を開けたのです。
両国政府のブラックリストに入れられても、真実の歴史を残したので、何の後悔もないと、井手さんは言い切っています。
ホンマ、勇気あるなぁ。
さらに同じ抑留問題なのに、シベリアばかりに目を向け、モンゴルには向き合ってこなかった日本政府を鋭く批判しています。
権力への監視……、まさにホンモノのジャーナリストですね。
同封されていた井手さんの手紙の締めはこう書かれていました。
「『「1700人の死者たちの命の真実』と遺族の切なる願いに1人でも多くの人が目を向けてもらうことを願ってやみません」
戦後81年を迎えますが、まだまだ戦争は終わっていません。
モンゴル抑留の全記録!!
命がけで取り組んできた彼の努力を結実させた本書を手に取っていただければ、ありがたいです。
めちゃグッド・ジョブ!
井手さん、とりあえずお疲れさんでした。
あと、出版記念会が各地で企画されているようですが、大阪では8月1日に開催されます。
